岩手県立大学、岩手県立大学盛岡短期大学部へ入学された皆さん、入学おめでとうございます。教職員一同、皆さんを心から歓迎いたします。また、本日、ご多忙中にもかかわらずご臨席を賜りました達増岩手県知事、五日市岩手県議会議長はじめご来賓の皆様方に、本学を代表して厚くお礼申し上げます。
今年は、新型コロナウィルスの感染が終息する気配のない中、入学者及びご家族の皆様の健康と安全を第一に考え、入学式をこのような形で執り行うことになりました。ご理解をお願いします。
さて、皆さんは入学後の様々な可能性に心躍らせて、今日を迎えていることでしょう。ここで大学生活について、皆さんに申し上げたいことがいくつかあります。これから述べることは、大学院に入学された皆さんにも、十分心してもらいたいことです。
一つは、皆さんは高校"生徒"とから大"学生"になりました。つまり"生徒"から"学生"になったことを自覚することです。それは、"学び"から"学ぶ"への切り替えです。生徒のときは"学び"で、「学んで習う受動的な学習」ですが、大学では"学ぶ"、すなわち「能動的に自ら学んで身に付ける、又は身に修める学修」に励まなければなりません。
では、能動的に、自ら学ぶことへの取りかかりは何でしょうか。それは"なぜだろうか"・"どうして"と不思議に思うこと、疑問を発することです。授業においても身近な生活においても、まず"なぜ"・"どうして"から始めてください。そして調べる、考える、最後に"なぜだろうか"が解決されることによって、能動的に学ぶ姿勢が身に付きます。このことを常に実行してください。
二つ目は、不思議に思う対象についてです。それは、今直面している課題が対象です。これが将来、自分にとって何のためになるだろうか、他にもっとやるべきことがあるのではないかなどと悩まずに、直面している課題に挑んでください。その課題の大小、解決、未解決にかかわらず、努力したことは必ず自信につながります。そして、一つ一つの自信と達成感の蓄積は、将来さまざまな課題に迅速に対応できる人間形成の原動力になります。どんなに小さなことでもよいです、今ある課題に全力を注いでください。ニュートンは、「今日なしうることに全力を注ぎなさい、そうすれば明日は一段の進歩を見るでしょう」という言葉を残しています。直面する課題に全力を尽くして、学生生活に励んでください。
三つ目は、東日本大震災津波の復興支援活動に参加して、グローバル人の素養を磨くことについてです。私は復興支援活動の中で、グローバル人才が育成されると考えます。
なぜかといいますと、グローバル社会では多くの国々が対等の立場で社会形成に参加します。現在、世界には日本を含む8つの文明があると言われていますが、それぞれの文明で価値観が異なることに注意しなければなりません。自分で良いと思うことでも、相手にとっては悪いこともあります。このような社会の中で活動するには、自分の考えを持ち、それを主張すると共に相手の話を聞いて理解し、何をどうするかをまとめて、実行に移すことが要求されます。
皆さんが震災復興支援活動で地域に出向くと、お年寄りから子供までいろいろな年齢層の人々と関わりを持ちます。このような環境の中で、共同作業を通して、価値観、考え方、主張の多様な違いを乗り越えて支援活動を推進する能力が磨かれます。これがまさにグローバル社会に通用する素養です。是非、震災復興支援活動に積極的に参加されることを望みます。
四つ目は、"大学生活の2年間、又は4年間はあっという間に過ぎてしまうから、後悔しないよう努力してください" とよく言われますが、どのような努力が必要なのでしょうか。それは、時間の進み方が変化することに気付くことです。アインシュタインの相対性理論は、早く走っている世界の時間はゆっくり進み、ゆっくり走っている世界の時間は、早く進むことを教えてくれます。これを私たちに適用してみましょう。私たちは時間がゆっくり進む現象が現れるような、光の速さに近い速さで走ることはできませんが、頭の回転の速さなら可能です。すなわち、頭を使えば使うほど、頭の回転スピードが上がり、時間の刻みが伸びることになります。
皆さんは既に、そのような体験をしています。小学生の頃は、一年が長く感じられたことでしょう。指折り数えて、早く夏休みが来ないかな、お正月が来ないかなと思ったこと、また放課後、友達と遊び、夕方に家に帰るまでの時間が長かったことなどの経験があるでしょう。その年代は、見ること聞くこと考えることの全てが新鮮で、常に頭を使っています。しかし、歳をとって、これまでの経験を頼りにしてあまり頭を使わずに過ごすと、一年があっという間に過ぎてしまい、もう一年が終わるのかと思うことがあります。小学生の頃に、勉強・遊び・生活の全てに頭をフル回転させたように、大学生活を送れば、在学期間が2倍にも3倍にも伸びます。大いに学業、課外活動、社会活動に励んで下さい。
以上、4点をまとめると、「"なぜだろうか"が自ら学ぶの出発点」、「"今に全力"が、自ら学ぶの姿勢」、「震災復興支援活動で、グローバル人に」、そして「時間は伸びる。頭をフル回転させて、大学生活を2倍に、3倍に」となります。是非、実行してください。
ここで補足ですが、新型コロナウィルス感染予防・防止のために、皆さんは大学本部や大学健康サポートセンターから送られるメイルや連絡を必ず読んで確認し実行してください。自ら身を守ることは、感染症の場合、自ら他の人の身を守ることにもつながります。「今に全力」です。
最後に、皆さんが実り多い大学・大学院生活を過ごされ、自己を十分に鍛えて、たくましく成長されることを願って私の挨拶とさせていただきます。本日は入学、おめでとうございます。
令和4年4月6日 岩手県立大学学長・岩手県立大学盛岡短期大学部学長 鈴 木 厚 人