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R06北いわて地域活性化推進研究 「久慈医療圏の看護・介護職連携を推進するための地域医療情報連携ネットワーク北三陸ネット活用に向けた基礎的研究」

R06北いわて地域活性化推進研究 

「久慈医療圏の看護・介護職連携を推進するための地域医療情報
連携ネットワーク 北三陸ネット 活用に向けた基礎的研究」PDF

研究代表者:看護学部 岡田みずほ
共同研究者:看護学部 工藤朋子、細川舞、遠藤良仁、後藤未央子
      総合政策学部 新田義修、阿部洋子(看護学研究科)

<要旨>
 本研究では、久慈医療圏内で運用されている「北三陸ネット」及び情報連携機能「メルタス」について、地域の看護職・介護職の理解促進と、必要とする機能について当事者同士が意見交換できる場づくりとして、座談会を企画・運営した。参加者は73名、医療・介護・福祉に関わる関連職種が参加し、北三陸ネットの活用上の課題、北三陸ネットの活用方法などについて、活発な意見交換を行うことができた。

1 研究の概要(背景・目的等)

1.1. 研究の背景

 2001年に通産省の「ネットワーク化推進事業」によって全国26地域で地域医療情報連携ネットワークが初めて構築されて以降、総務省の地域医療ICT 利活用事業や2010年の地域医療再生基金などの補助金交付により、全国各地に200を超える多くの地域医療情報連携ネットワークが整備されてきた。
 地域医療情報連携ネットワークは、医師・看護職・介護職とのメッセージのやり取りで活用している件数が多い。具体的には、患者のバイタル情報・服薬情報・生活記録などを共有している。その結果、細やかな患者の状況把握のための活用や、体調変化による緊急対応の相談や入退院に関する相談などにも活用していることが明らかとなっている。それらの情報の多くは、医療介護専用の非公開型SNS を活用しやり取りが行われている。しかし、課題も多く「関係職種の参加率が少ないためあまり使用できない」、「関係者の IT リテラシーの問題がありあまり使用できない」、などが挙げられていた(渡辺,2022)。
 岩手県は、5つの地域医療情報連携ネットワークを有している。そのうち、久慈医療圏(久慈市、洋野町、野田村、普代村)で運用されている「北三陸ネット」は、2016年から NPO法人北三陸塾が運営している地域医療情報連携ネットワークである。令和5年(2023年)5 月現在、4つの病院、5つの診療所、11の歯科診療所、14の調剤薬局、31の介護施設・事業所、4つの地域包括支援センターが参加している。北三陸ネット登録者数は、11,364人(令和5年6月20日現在)となり、久慈医療圏の人口58,000人の19.6%を占める。登録者のうち65歳以上は44%、75歳以上では60%と高齢者が多いことが特徴として挙げられる。
  このように、久慈医療圏の医療機関167施設のうち68施設(41%)が参加し、北三陸ネットが目指す多職種(病院・診療所・歯科・薬局・介護施設)による医療介護福祉の切れ目のない医療・ケアの提供を実現できるよう、年々機能拡張を続けている。しかし、岡田らが2023年に実施した「久慈地区における医療・介護連携の中で療養支援に必要な患者情報をつなぐための基盤研究」におけるヒアリング内容では、①診療所、介護施設・事業所の参加が少ない。②看護職種(訪問看護、病院看護師、診療所の看護職)間での情報共有がうまくいっていない。③看護職・介護職が北三陸ネットについて十分に理解できていないため、活用の方法がわからない。④北三陸ネットについて、説明を聞く機会が少ない。などの課題が明らかになった。
1.2. 研究目的
 本研究では、久慈医療圏で医療機関・訪問看護・訪問介護に就業する看護・介護職と情報交換する場を持ち、伝達する情報についてそれぞれの違いを明確化し、さらに現在、北三陸ネットで運用されている情報連携機能について、地域の看護職・介護職の理解促進と、必要とする機能について当事者同士が意見交換できる場を構築することとした(図1)。
画像1.png

図1本研究の概念モデル

2 研究の内容(方法・経過等)

 まず、久慈医療圏で、北三陸ネットの活用に積極的な医療機関の医師、看護師に本研究の趣旨を説明し、協力を得た。さらに、北三陸ネットを運営している北三陸塾理事にも本研究の主旨を説明し、座談会の企画・運営について助言を得た。
 次に、座談会の案内等を久慈医療圏内の医療施設、介護施設130施設へ案内を発送すると共に、北三陸ネットの支援画像2.pngシステムであるメルタス上の掲示板にも掲載許可を得て、開催案内を行った(2)
 当日は、北三陸ネットに関するミニレクチャーと座談会を実施した上で、参加者に3つのテーマを提示し、興味があるテーマについて、自由に語ることができるように企画者がファシリテートした。
【座談会のテーマ】
 1.北三陸ネットの基本や使い方や疑問の解消や、使ってみようと思える工夫を考える。
 2.メルタスの基本や日々の使い方や疑問の解消や、使ってみようと思える工夫を考える。
 3.久慈医療圏の医療・介護の課題をどう解決するか、現場の課題を解決する新しい仕組み、ネットワークをさらに発展させるアイディアの創出。

3 研究の成果

 3.1 参加者の概要
  企画した座談会等への参加者は、総計73名だった。参加者の職種を表1に示す。


表1 参加者の概要

職種 参加者数 職種 参加者数
看護職 39 検査技師
保健師 歯科衛生士
介護職 10 事務
医師 企業
歯科医師 教員
薬剤師 総計 73

座談会の風景

画像3.png座談会実施後のアンケートに回答した31名のうち、看護職及び介護職が56.6%だった。また、病院勤務者の回答が23.3%、次いで行政20%だった。今回の参加動機では、案内のパンフレットを見たが最も多く51.5%だった (2)画像4.png

表2 アンケート回答者の概要

3.2 理解度、満足度及び他職種とのコミュケーションについて 
 理解度、満足度及び他職種とのコミュケーションについて10 段階で評価した結果、満足度は平均8.2、北三陸ネットへの理解度は平均7.5、他職種・他業種とのコミュニケーションの深まりは平均7.2 であり、おおむね良好な結果を得た (3)

図3アンケート結果
画像5.png

4 今後の具体的な展開

  座談会後のアンケートでは、看護職や介護職が地域で連携していく上で必要な取り組みとして、「医療介護職種の連携意識の醸成と情報リテラシーの向上に向けた教育」「北三陸ネットやメルタスの活用推進に向けた医療機関や介護施設等への働きかけ」「継続的な座談会の企画」などが挙げられた。

 今回のような、職場や職種の枠を超えて話す場を定期的に持つことができれば、久慈医療圏内の人的ネットワークの強化につながり、地域のより充実した医療連携を様々なアイディアを出しあいながら、構築することにつながると考える。

5 その他(参考文献・謝辞等)

  本研究にご協力いただきました全ての皆様へ感謝申し上げます。

参考文献 渡辺愛(2022):全国的な医療情報連携ネットワーク基盤構築等が地連NWの存続に与える影響について,
https://www.jmari.med.or.jp/result/working/post-3560/