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R05北いわて地域活性化推進研究  「個人で継続可能な介護予防プログラムの構築」

R05北いわて地域活性化推進研究 

「個人で継続可能な介護予防プログラムの構築PDF

研究代表者: 看護学部 馬林幸枝

共同研究者: 千田睦美、小嶋美沙子、鈴木睦、城内裕希(看護学部)

米内松司(有限会社ホームセンター仙台 )

<要旨>

 本研究は、県北地域に普及可能な個別プログラムを構築することを目指す。令和元年より協働研究に取り組んでいる協働実施施設の利用者を対象として、地域の特性も踏まえた個別プログラムを構築することを目的とする。令和5年度は身体機能測定を39名に実施した。令和元年度からの継続参加者は11名であった。継続参加者の身体機能測定結果を継続的に個別で確認すると、維持・若干の向上がある項目や緩やかな低下が認められる項目があったが、急激な低下は認められなかった。対象者の年齢を考えると、緩やかな低下となっていることは正常の反応と考えられる。現在、栄養状態について、簡易栄養状態評価表(最新版MNA®_SF)を用いた聞き取り調査を実施中である。令和4年度に実施した聞き取り調査について、学術論文を作成し、令和63月発刊。聞き取り調査から見出された、それぞれの参加者が自宅で継続している「個人でできる取り組み」と「他者と共に行う取り組み」を基盤として、今回の研究を計画している。

1 研究の概要(背景・目的等)

 岩手県内の中でも県北地域は、広大な面積を有するにもかかわらず介護保険サービスが少ない現状にある。平均寿命が男女共に80歳を超えており、老年期をいかに健康に過ごすのかが地域の大きな課題となっている。限られた資源を有効に活用し、高齢者自身が介護予防の意識を高く持ち続けるためには、高齢者自らが選択し取り組む介護予防プログラムとして、個人でも継続可能なプロトコル(人が変わっても確実に実行できる手順)の検討を行う必要がある。

 地域包括ケアは介護予防を含む事業を国の事業としてではなく、地域単位の事業とし、地域の実情に応じた運用を基盤としている。すでに地域での活動基盤を持つ協働実施施設が、より効果的に高齢者に関わり、地域で支援を行う方法を構築することは、公的サービスを利用せず高齢者が地域で健康に生活する基盤として必要性が高く、健康寿命の延伸に寄与することが可能となることが期待され、意義も大きいものと考える。

 本研究は、県北地域に普及可能な個別プログラムを構築することを目指す。令和元年より協働研究に取り組んでいる協働実施施設の利用者を対象として、地域の特性も踏まえた個別プログラムを構築することを目的とする。

2 研究の内容(方法・経過等)

 有限会社ホームセンター仙台(以下、事業者とする)と共同で事業を実施し、当該事業者のデイサービス利用者を対象とした。調査期間は、2023年5月~20243月であった。

1)身体機能測定

介護予防への寄与を評価できる身体機能測定項目として、下肢筋力・歩行力・平衡機能・骨密度・血管弾力性、筋肉量の測定を行った。

下肢筋力は椅子立ち上がりテストとし、30秒の間に椅子から立ち上がることのできる回数を測定し、下肢筋力・パフォーマンスを評価した。歩行力はアップ&ゴーテストとし、歩行速度、椅子からの    立ち上がり、方向転換の機能を評価するテストであり、ADL(日常生活動作)の評価や転倒予測に使用した。平衡機能はファンクショナルリーチテストとし、腕を90°上げた状態でできるだけ前方に手を伸 ばしてもらい、その時の最大移動距離を測定した。この評価によって、その場でバランスを崩さないように姿勢の調整ができるのかというバランス能力を評価した。骨密度は骨量・骨密度の測定で行われる測定方法として従来から行われている測定方法「超音波法」で測定した。血管弾力性は加速度脈波測定とし、加速度脈波による加速度脈波の評価(アルテット®使用)とした。 筋肉量の測定は、簡便かつ非侵襲的な方法である、体成分分析装置を用いて測定した。

2)検討・評価

身体機能変化についてプログラム介入前後の長期継続結果の比較、身体介護予防への効果の視点で確認・検討・評価を行った。

3)栄養状態調査

簡易栄養状態評価表(最新版MNA®_SF)を用いて聞き取りを実施中。令和3年度の結果と比較分析を行う予定。

4)学術論文投稿、発刊

令和元年の身体機能測定の全ての測定に協力いただいた研究参加者14名を対象に行った聞き取り調査(デイサービスの参加頻度、好きなことやデイサービス以外に身体を動かす機会はあるか)につい  て学術論文を作成、投稿を行い、令和63月に発刊となった。

3 研究の成果

 令和5年度は身体機能測定を39名に実施した。令和元年度からの継続参加者は11名であった。継続参加者の身体機能測定結果を継続的に個別で確認すると、維持・若干の向上がある項目や緩やかな低 下が認められる項目があったが、急激な低下は認められなかった。対象者の年齢を考えると、緩やかな低下となっていることは正常の反応と考えられる。養状態について、簡易栄養状態評価表(最新版 MNA®_SF)を用いた聞き取り調査を実施中である.令和4年度に実施した聞き取り調査について、学術論文を作成し、令和63月発刊されている。

4 今後の具体的な展開

 令和6年度は令和元年度~令和5年度に実施した研究を基盤として計画している。対象者の多くは後期高齢者であることも踏まえ、長期継続の視点で年1回の身体機能測定を行い、令和元年度からの身体機能測定データを用いての分析を念頭にスケジュールしている。なお、令和元年度から同様の調査を実施しており、プログラム実施の効果を検証するために、継続して調査をすることの説明をし、同意を得た上で行う。令和4年に実施した聞き取り調査結果を基に、個別プログラム提案前に必要となる対象者の背景を理解するための聞き取りシート(以下、個別背景シート)を作成し、個別背景シートを組み込んだ個別運動プログラムについて検討し、個別プログラム案を作成することを計画している。

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引用:岩手県(2018.岩手県地域医療構想

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5 その他(参考文献・謝辞等)

謝辞 本研究にあたり、介護予防プログラム事業にご協力いただいたデイサービス利用者様、共同研究者としてご協力いただいた職員の皆様に、深く感謝申し上げます。

参考文献

岩手県(2023):令和541日時点の介護保険に係る指定事業所一覧

https://www.pref.iwate.jp/kurashikankyou/fukushi/kaigo/1003778.html(2023616日閲覧)

内閣府(2022):令和4年度版高齢社会白書

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf(2023年616日閲覧)