R07北いわて地域活性化推進研究
2025年度_北いわて地域活性化推進研究_研究成果報告書_鈴木先生.pdf (335.72 KB)
研究代表者
看護学部:鈴木 睦
共同研究者
- 看護学部:細川 舞、小嶋 美沙子、及川 紳代、岡田 みずほ、千田 睦美
- 総合政策学部:新田 義修
要旨
北いわてにあり高齢化先進地域である八幡平市は、医療・介護人材の慢性的な不足、特に在宅介護の脆弱さが深刻な課題である。令和6年度調査では、介護施設職員が身体症状の判断や医療的知識の不足、認知症状への対応に困難感を抱えており、自施設内での相談に限界を感じている実態が明らかになった。これらの困難を解決するために外部の人的リソースとの連携や、必要な情報を即座に取得できるICTを活用した支援システムの必要性が抽出され、「人財マッチングシステム(仮称)」の構築に取り組んだ。
1 研究の概要(背景・目的等)
八幡平市の高齢化率は44。5%であり、人口減少と共に「支える側」の人材が減少し、医療・介護サービスの維持が深刻な課題となっている。高齢者独居世帯も多く、地域に訪問看護や訪問介護の担い手が不足しているため、人生の最終段階を介護施設で迎える高齢者が多い現状にある。令和6年度は、介護施設職員(看護職・介護職・リハビリ職)の高齢者ケアに対し、看護師は身体症状の判断や管理に対する不安、介護士は医療的知識の不十分さ、リハビリ職は認知症状や身体症状について困難感を抱いており、相談相手が少ない職場環境や人手不足を背景に不安を抱えたままケアに従事している実態が明らかになった。以上のことから、本研究では、介護施設の職員が必要時にいつでも情報や知識を集めたり、外部の人的資源とのつながりをもち、高齢者に効果的にケアを提供するためのICTを活用したサポートシステムを構築することを目的に、研究課題に取り組んだ。
2 研究の内容(方法・経過等)
1)サポートシステムの構築(図1)
※高画質版はPDFをご覧ください
図1 構築するシステムの概要
令和6年度に八幡平市の介護保険施設の専門職を対象にした調査で明らかになった結果を基に、構築するシステムの概要をメンバー間で検討した。ルーラル地域の介護保険施設と県内医療機関、教育機関に所属する専門職とが、タイムリーにシームレスにつながることを目標に、人的資源のマッチングを主としたサイトの開設に取り組んだ。サイトの開設は、外部業者に委託した。
2)施設と人材リソース、施設同士がつながる基盤づくり
令和6年度の研究協力施設、研究対象者を対象に、調査報告会を2回(O地区、A地区)実施した。調査報告会終了後には、各専門職の交流会を開催し、自施設が抱える高齢者ケアにおける課題の共有や、情報交換の機会を設けた。また、構築するサポートシステムと今後の研究展望について説明した。
3 研究の成果
1)サポートシステムの構築
高齢者を「支える側」の人材が減少している地域において、医療・介護サービスを維持するためには、高齢者ケアに従事する専門職の不安や負担の軽減を図る必要がある。外部の人的リソースとの連携や、必要な情報を即座に取得できるICTを活用した支援システムの構築が解決手段として、本研究では「人財リソースバンク(仮称)」(図2-1、図2-2)を構築した。
※高画質版はPDFをご覧ください
図2-1 人財リソースバンクシステム(仮称)ホーム画面
※高画質版はPDFをご覧ください
図2-2 人財リソースバンクシステム(仮称)検索画面
構築したシステムは,ログインをすると誰でも,検索画面からキーワードを入力し,いつでも専門職の検索ができる仕様で作成されている.また,相談内容を直接入力することもでき,日常の高齢者ケアにおける相談や,施設内研修の講師依頼などが行えるようにした.
2)施設同士がつながる基盤づくり(写真1,写真2)
写真1 調査報告会の様子
写真2専門職交流会の様子
調査報告会を2地区で開催し,看護職,介護士,リハビリ職,栄養士,ケアマネジャーなど,高齢者ケアに従事する多職種,合計19名の参加があった.調査報告会終了後のアンケートでは,90%以上から,本研究成果を活用したいとの回答が得られた.参加者からは,「他施設・多職種との情報交換を通じて,多様な意見や取り組みを知ることができた」「普段以上に本音に近い対話や交流ができ,地域性を踏まえた情報共有も有意義だった」との声が聞かれた.
4 今後の具体的な展開
令和6年度から調査に協力いただいている施設の対象者にシステム試用モニターを依頼し,パイロット運用を進める.システム試用後は,システムの利便性と有用性を検証し,協力者と共にシステム評価を行う.八幡平市での本格運用を開始させ,他地域へのシステム展開の可能性も視野に調査を進めていく.
専門職リソースとして,本学看護学部の教員の他,岩手県内の医療機関に所属する専門看護師や認定看護師,理学療法士や作業療法士などのリハビリ職,栄養士などの多職種の人財の協力を得て,リソースバンクの登録を促進することで,システム利用者の満足度を高めるために活動を継続する.同時に,実際にバンクに登録し,専門職として在宅ケア支援に協力くださった方への利益,報償をどのように考えていくかが今後の課題である
5 その他(参考文献・謝辞等)
(参考文献)
八幡平市高齢者福祉計画(2025):https://www.city.hachimantai.lg.jp/uploaded/attachment/20721.pdf(2026年4月閲覧).
古賀 聖典、田中マキ子(2024):地域包括ケアシステムにおける専門職の協働連携の実態(第一報)~農村部の専門職から見た課題~,日本ヒューマンケア科学会誌,17(2),1-7.
服部 篤,横山淳一(2025):在宅ケアにおける多職種の情報連携の検証と課題―ICTを用いた連携が一般的になるには―,日本経営診断学会論集25, 124–130.