岩手県立大学 盛岡短期大学部

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本取組の実施プロセス

取組の動機・背景

岩手県が策定した「岩手県国際交流策定計画」によると、それまでの10年間で各市町村が外国の都市と結んだ友好姉妹提携数は11ヶ国25市町を数え、各地で文化交流事業も多く開催されるようになっている。本学科は、以上のような社会的背景をふまえ、豊かな教養と国際感覚を身につけることにより、地域の国際化に貢献する人材を育成するという教育目標を掲げ、1998年4月に開設された。

開学以後の教育実践とその改善を模索する中で、豊かな国際感覚を養成するためには、英語運用能力の向上はもちろんであるが、日本語運用能力んの涵養が不可欠であることが判った。すなわち、日本語の文章を正しく読み取り、自らの言葉で理解しそして思考し、その内容を相手にわかり易い言葉で伝えること、また主体的に討論の場に参加していくこと、そのための基本的なコミュニケーションスキルの養成が文化理解とともに重要であるということである。またさらに、多様な文化を理解するためには、自己に基盤を置いた深い他者理解が必要であること、自らが立脚する地域文化に対する理解が重要であることも浮き彫りになった。

目的・目標

海外研修

パーソナルコミュニケーションスキル(PCS)・グローバルコミュニケーションスキル(GCS)という2つのコミュニケーションスキルは、自文化理解(自己理解)および他文化理解(他者理解)と表裏一体の関係にある。本取組は、この2つのコミュニケーションスキルを磨きながら、自文化と他文化との違いを認識・理解し、そこから深い他文化理解にいたる教育を施すことにより、自己とは異なる文化を持つ他者に深い理解と共感を寄せることのできる人材、さらにはフロンティアの拡大が進行する現代、多文化共生の進む社会にあって、深い人間尊重の精神をもって、国際社会および地域における国際化に貢献する人材を育成しようとするものである。

本取組の目標は、盛岡短期大学部の「教養教育の充実」「地域社会および国際社会の発展への寄与」「地域における国際交流活動を支援しその活動を実践的教育研究の場として生かす」とする目標と合致している。

また公立大学法人岩手県立大学「中期目標」の中の「本学の基本理念」に「国際社会への貢献」として掲げる事項、「大学間交流協定を締結している海外の大学との交流を密にし、実績を踏まえた効率的、計画的国際交流事業体制を整備する」「国際交流事業を教育研究に生かす実践的取組を推進する」とも深く関わるものである。

取組のプロセス

本学科創設時の教育課程の特色は、実践的語学教育による国際的コミュニケーション能力の養成、とりわけ英語運用能力の向上に大きな比重をかけている点にあった。語学教育は、文化理解を基盤にすることでいっそう効果的に実践できるとの考えから、文化理解に資するためのアメリカ研修と韓国研修の2つの研修旅行を1999年から試行した。

その中で、韓国やアメリカ合衆国の学生との交流学習において、自らのアイデンティティの基盤となる自国の文化や日本語について紹介解説ができないこと、自らの言葉で思考しその意見をはっきりと述べるために不可欠な日本語を正確に運用する能力の不足、自国や地域の文化理解に立った他文化理解の重要性といった課題が顕在化した。そこで、自己を基盤として他者理解に向かう道筋を大切にするために、コミュニケーションスキルの育成を見指し、日本語による表現能力の向上を図るため、2000年度教育課程に「文章表現論」(1年後期、必修)を新設、また海外研修旅行を「国際文化理解演習」(1年通年、選択科目)として教育課程に位置づけた。

その方向性をさらに発展させるために、2004年度から大幅な教育課程の改善を行い、PCSGCSの育成、それを基盤とした文化理解への道筋をつける統合的教育課程の実践に向かった。

このうち特に前者のスキルを養成する授業科目として、「国際文化基礎演習」を、日本語による「読む」「書く」「調べる」「話す」といった基本的学びの技法と獲得した考えを表現する能力とを培う授業科目として特化し、教材の選定、授業の進め方、演習に学生を参加させる指導方法などについて担当教員による授業研究を積み重ねてきた。

直面した課題

コミュニケーションスキルを磨き、他文化や自文化への深く幅広い理解力を養う教育を達成するために2年間の時間しか与えられていないことが直面した最大の課題であった。そこで、コミュニケーションスキルを十分育成した後に文化理解や異文化体験の科目を展開的に位置づけるのではなく、その逆にまず1年次に行う異文化体験で学習の意義を体感させ、動機づけを行い学生のモチベーションを高めた上で、スキルとコンテンツ(文化理解教育)とを同時並行的に連動して学ぶことで、その向上・深化を図るように工夫・改善を行った。

また2005年度に応募して不採択になったのち、指摘された習熟度別学習の効果、改善の成果検証の方法については、以下のような改善を図った。

  • 「英語表現A・B」について、入学時にTOEIC Bridgeによるプレースメントテストを実施し、習熟度別にクラスを編成した。また卒業時に同じテストを実施して、その詠歌を検証した。
  • 「英語表現B」について、90分の授業を45分ずつに分け、2倍の時間を確保して効果的な教育が行えるよう授業改善を図った。
  • e-learningを多くの授業で実施し、ここの学生の能力に応じた学習を可能にした。
  • 「国際文化基礎演習」でWebなどを活用した資料検索・調査の方法を指導した。
  • 「国際文化基礎演習」で、ワークシートなどを活用し、学生同士の相互評価、達成度に対する自己評価を試行した。
  • 「地域文化理解演習」で2泊3日の実地研修を含めた授業計画を立案、実施した。
  • 「日本語表現論Ⅰ」で5~6名のグループ学習、またWebを活用した個別のコミュニケーション教育によって学生それぞれの習熟度に応じた指導を行うことができた。