岩手県立大学広報誌県立大 ArchVol.76

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教育・組織改革

平成31年度から、ソフトウェア情報学部と総合政策学部のカリキュラムが大きく変わる。これは、開学20周年を契機に、大学が打ち出す新たな取組。2つの学部だけでなく、大学全体が取り組む新たな教育について、総合政策学部2年の冨澤南さんが高橋聡教育支援本部長に聞いた。

学びの意味を明確に理解することで幅広い知識と高度な専門知識を育む

教育改革について語り合う
高橋聡教育支援本部長(右)と冨澤南さん(左)。

冨澤 私が学ぶ総合政策学部もカリキュラムが変わりますが、今回の教育改革のポイントを教えてください。
高橋 冨澤さんは、これまで学んだ科目がそれぞれどんな風に役立つのかわかっていますか?
冨澤 よく理解しないまま科目を選択していました。はじめに学んでおいた方がよい科目を後に履修するなど順番を間違えたりしましたね。
高橋 そういう混乱をなくし、皆さんが学んでいる科目が、他の科目とどのようにつながっていくのか、その全体像を把握して学ぶことができるようにするのが、今回の改革なんです。
冨澤 いま勉強している科目の学ぶ意味が明確になるということですか?
高橋 その通りです。先生に「これをやりなさい」と言われても、それが何の役に立つのかがわからないまま勉強することって多いですよね。3年次になって「あの時学んだことはこの勉強につながるのか」と後になってわかることが多い。そうではなくて、1年次の時から全体の学びのストーリーを把握した上で、個々の科目を勉強できるようになれば、学ぶ意味がわかって楽しいし、より効率的に履修できます。
冨澤 看護学部や社会福祉学部も同じですか?
高橋 専門職を育成する看護学部や社会福祉学部は、それぞれアプローチの仕方が違いますが、基本は同じ。全体の学びのストーリーを明確に打ち出して、個々の科目に落とし込んでいきます。
冨澤 全体がわかると、科目を選択する時にも役立ちますね。
高橋 自分の専門での学びを深めていくと同時に、それ以外の科目にも学ぶ意欲を広げられるような工夫もしていこうと思っています。実学的な方向性を深めながら、幅広い知識もしっかり身につけていく。深めることと広げることは、矛盾することのように思うかもしれませんが、どちらもできる学生は素晴らしい力を身につけると思いますね。

大学全体で教育変革に取り組み、「岩手県の知の拠点」を目指す

 本学では、第三期中期計画を平成29年に策定し、「自らの意志と力で課題に挑み、未来を切り拓く能力を育む教育」、「地域の特質、独自性と人間主体の活力を生み出し、未来創造に資する地域貢献」、「教育と地域貢献の根幹となる実学・実践に基づく、高い研究力」を基本姿勢に掲げました。

 そして、開学20周年を契機に、教育研究組織の見直しを行い、ソフトウェア情報学部・研究科では、平成31年度から現行の講座制を廃止し、時代の変化に対応した4つのコースを設置するほか、博士前期課程を含めた6年制の一貫教育体制を整備します。

また、総合政策学部では、地方行政や地域産業を担う人材の育成に資するよう、現行の2つのコースを3つのコースに改編することとし、大学全体で「岩手県の知の拠点」として、さらなる飛躍を遂げるべく、変革に取り組んでいきます。

岩手県立大学学長 鈴木 厚人
 

コース制の導入と6年間一貫教育への展開

平成31年度から学部・研究科に4つのコース「データ・数理科学、コンピュータ工学、人工知能、社会システムデザイン」を設けます。1年次はコースに属せずに共通のコンピュータサイエンスの基礎を学び、2年次にいずれかのコースに属し、さらに3年次からは研究室(各研究室教員1名)のもと、コースにおける専門性を高め、4年次からは卒業研究に取り組みます。コースや研究室は年次進行とともに自らの適性・関心を見極めながら選択することができます。また、学部で身につけた専門知識に加えて学際的な知識の修得もできるように、学部と研究科博士前期課程の接続を円滑にする6年制の一貫教育カリキュラムを整備します。

社会変革に対応した4コースを新たに設置、研究・教育力の強化でさらなる地域貢献を

ソフトウェア情報学部長
猪股 俊光

 今、社会は大きな変革期を迎えようとしています。農業、運輸、商業、工業、金融分野等のすべてのモノがIoTによってデータをやりとりするようになり【コンピュータ工学】、集積されたビッグデータに対して、データ解析【データ・数理科学】や、機械学習【人工知能】等が適用され、必要とされる情報の抽出が行われます。また、デザイン思考等の手法【社会システムデザイン】による諸課題の解決が図られるなど、超スマート社会の実現が間近に迫っています。
 ソフトウェア情報学部では、教育研究組織やカリキュラムの見直しを行い、平成31年度から上述の4つのコースを設けるとともに、学部・研究科博士前期課程の連携の強化を図りながら、情報通信技術の利活用による研究力の強化、高度専門技術者育成による教育力の強化を目指し、地域に貢献していきます。

 

「政策」を様々な専門分野と結びつけ、新時代の課題に対応できる人材教育を

総合政策学部長
吉野 英岐

 平成31年度入学生から総合政策学部では新しいカリキュラムを導入します。政策をキーワードに様々な専門分野を政策と結びつけて考え、そして、提案をしていく能動的なカリキュラムです。
 政策は県や市区町村といった地方自治体のレベルだけでなく、日本国政府、そしてASEAN、EUなどの国家間共同体や国際連合(UN)など、様々なレベルで立案され、実行されています。また政策は自治体や政府の領域だけでなく、地方の中小企業から国際的な企業の領域、地元の町内会・自治会といった住民組織から広域なNPOや国際的な市民組織の領域まで、多様な場面での意思決定や方針決定のあり方を意味します。
 まさにローカルからグローバルまでを見渡す地平からのアプローチをもとに、これからの時代に対応する課題への対応をともに考えていく学部を目指します。

カリキュラム概念図

総合政策学部では社会の様々なニーズや地域特性に配慮し、平成31年度入学生から「法律・行政コース」「経済・経営コース」「地域社会・環境コース」の3つのコースを設けます(学生のコース配属は3年次からです)。学生はすべてのコースに共通する科目である政策コア科目(政策系学部としての基礎的必修科目)、調査分析科目、共通調査実習(分析能力を身につけるために必要な科目)、及びキャリア教育科目を履修するとともに、各コースに配置されるコース基幹科目、展開科目、専門調査実習、演習科目を履修します。