岩手県立大学広報誌県立大 ArchVol.74

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地域フィールド

企業とシステムの確認をする様子

社会福祉学部
准教授 井上 孝之いのうえ たかゆき

宮城県角田市出身。東北大学大学院修了(教育学)。幼稚園・小・中・高・支援学校の教員免許を持つ。宮城教育大学附属支援学校、附属幼稚園など15年の教諭経験を経て、2004年岩手県立大学着任。2015年には保育士資格も取得した。岩手の好きなところは、温泉が近くにあるところ。野菜がおいしいところ。

ICTで、煩雑な報告業務を効率化 もっと、子どもと向き合う保育を

 保育に対するニーズの多様化や制度の複雑化により、保育所や認定こども園といった保育施設では、登降園の記録から料金計算、日誌作成、自治体への実績報告など煩雑な事務作業が負担になっている。それが「保育の質の低下」にもつながりかねないとして、国では保育施設のICT化を推奨してきた。しかし、現場のICTに対する理解やスキルが十分でないなどの理由から、なかなか導入が進まないのが現状だ。
 さらに自治体に提出する報告書も、手書きだったり、パソコンを使ったりと施設によってさまざまで、それを集約する自治体職員の負担も大きかった。こうした課題を解決するため、井上孝之先生の研究チームは岩手県保健福祉部や地元IT企業と連携し、独自のシステムを開発。産学官連携で「保育施設と自治体を結ぶICTの実証的研究」を行なっている。
 「保育施設向けの業務支援システムはあっても、さらに自治体とも繋がっているものはまだ例がありません。つまり全国初です」と井上先生。2017年から10施設を対象に実証実験を開始。今年度は中間評価をもとに修正を加え、さらに検証を重ねていく予定だ。
 ICTのCはコミュニケーション。つまり、人と人をつなぐものでなくては。そう話す井上先生が、研究者として大事にしているモットーは「人の役に立つ研究をすること」。煩雑な事務作業の負担を減らし、そのぶん子どもと向き合える時間をつくるこのシステムには「研究で人を幸せにしたい」という井上先生の思いも込められている。

ソフトウェア情報学部
教授 佐々木 淳ささき じゅん

岩手県北上市出身。1981年に岩手大学大学院工学研究科を卒業後、日本電信電話公社(現NTT)に就職。1993年、光ネットワークの研究により東北大学から工学博士を取得。1998年岩手県立大学ソフトウェア情報学部に着任、現在に至る。趣味はギター。バンドに所属し、休日にはライブ活動なども楽しんでいる。


ソフトウェアで、外国人観光客に岩手の魅力をナビゲート

 「ソフトウェアとは、人間の『こうしたい』という思いに寄り添い、サポートするためのもの」。そう話す佐々木淳先生は「ソフトウェアで集約できる情報をどう生かすか」という視点で、さまざまな研究に取り組んでいる。
 そのひとつが「観光情報システム」だ。2013年から3年にわたり行った研究では、雫石町にある住宅付農地への定住促進を目的に、ウェブ広告をクリックした人の属性(居住地、年齢、性別など)を分析。集約した情報をもとに効果的な情報発信の方法を考察した。これらの研究手法を応用しながら、現在は外国人旅行者向けの情報システムの構築を手がけている。
 「例えば、岩手を訪れた外国人がSNSにどんな写真を投稿しているのかを分析してみると、中国の人は桜、オーストラリアの人はスキー、というように、国籍や年齢などの属性によって興味や嗜好が違うことがわかります。なぜここが? という意外な場所が人気だったりして、潜在的な観光資源の発掘にもつながりますね」。
 外国人観光客も個人旅行が主流になりつつある今、「それぞれの行きたいところへ、ストレスなくアクセスできるソフトウェアを作りたい」と佐々木先生。まずは、時刻表と地理データ、観光情報を結ぶ『時空間データベース』を構築したいと考えている。
 「観光情報に限らず、医療福祉、生活支援などあらゆる分野に応用できるのがソフトウェア。そのためには、いろんなことに興味を持って、視野を広げることが大事だと考えます。そういう意味でも、専門家よりジェネラリストと呼ばれたいな、と思っています」。