岩手県立大学広報誌県立大 ArchVol.73

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教育フィールド

「被災した人々の力になりたい」という学生たちの熱き想いへの支援を起点とし、学生発の様々な社会貢献活動を下支えする岩手県立大学独自の就業力育成支援事業『Eプロジェクト』。今年度で7回目となるEプロは、これまで39のプロジェクトを支援してきた。社会貢献や地域振興に役立つ学生たちのプロジェクトをサポートしながら、個々の力を鍛え、実社会で必要となる「就業力」を育てていく取組をご紹介しよう。

学生自らが企画・計画・実行、失敗も成功も成長につながる!

 学生時代であれば、教師の指示を待てば良かったかもしれないが、社会人ともなるとそうはいかない。仕事で求められるのは、何よりも自主性と積極性。受け身では信頼は勝ち取れないし、責任ある仕事も任せられない。自ら企画を立案し、それを成功に導く実行力が必要とされる。
 そこで岩手県立大学では、実社会で必要な就業力を高めることを目的として、平成23年度から『Eプロジェクト(略称Eプロ)支援制度』をスタートした。これは、学年や学部の垣根を越えた複数の学生メンバーが、企画・立案から実現までの一連のプロセスを体験するプロジェクトで、1グループに30万円限度の活動費が補助される。活動にかかるスケジュール管理から組織運営、経費管理など、すべてを学生たちの手で行っていくのだ。

似鳥 徹
学生支援本部長

 

「学生は身近な仲間うちで完結する場合が多いのですが、それでは世界は広がりません。本学には4年制4学部に加え、盛岡・宮古の2短大部があります。仕事でも多職種連携があるように、学生のうちから他学部の学生と協働してプロジェクトを実行することで、コミュニケーション能力や協調性を育んだり、自分とは異なる多様な考えや価値観を知ることができ、成長につながっていきます」と、似鳥徹学生支援本部長は説明する。
 それぞれのプロジェクトを審査で通すため、大学サイドにプレゼンして大学職員と交渉することも、大事な経験であり社会勉強。「一度のプレゼンで審査が通るグループはほとんどありません。どこに不備があるのか、教職員が厳しくフィードバックをして、学生に再考を促すことで、企画の甘さを反省し、より良い形にブラッシュアップしていきます」と、似鳥本部長。
 こうした企画を通す苦労や交渉、多様な人間との触れ合い、個人では成し得ないことへの挑戦、そして現場で吸収する知識や貴重な体験から、学生たちは大きく成長するという。

学生ならではの柔軟な発想で社会や地域に役立つものを

 平成23年度から始まったEプロも今年度で7年目となり、これまで39プロジェクトの支援を行ってきた。スタート当時は東日本大震災の発生直後だったこともあり、復興支援やボランティア活動に関するプロジェクトが多かったが、最近はまちづくり、高齢者支援、学びの伴走、映画上映など、様々な社会貢献や地域活性化の取り組みが広がっている。

平成29年度に採択となり、完遂されたプロジェクトは3つ。視覚障がい者向けに学内の障壁や改善点を調査する「学内バリアフリー調査プロジェクト」、女性向けの地域情報発信メディアアプリを開発する「Hashigoプロジェクト」、沿岸部の復興現状を冊子にまとめて発信する「むすびプロジェクト」だ。
企画を実行して終わりではなく、学生たちは一年間の活動を振り返り、その成果を発表。プロジェクトを支援した大学サイドに評価を受け、浮き彫りになった課題点の改善に取り組み、さらに次のステップへ。こうした一連のプロセスを経験することで、就業力を身につけていくのだ。

チームでものづくりに挑む難しさとやり甲斐を実感

 今回のEプロが2回目の採択となったyurue(ユルイー)は、ソフトウェア情報学部と総合政策学部の混成チーム。今年度は新たな旅行体験が生まれるアプリの開発に取り組んだ。

左から
今野遼太さん、下村一将さん、功刀剛さん。

 

「先生が指導してくれる授業とは違い、考えるのもつくるのも自分たち。軸を見失い迷走したこともあったのですが、チームでものづくりをする良さを実感できたことが大きな収穫です」と話すのは、功刀剛さん(ソフトウェア情報学部4年)と下村一将さん(同3年)。未経験の技術にもチャレンジしながら、互いの考えを理解し合い意見をまとめていくことに苦労したという。
 「メンバーの力を引き出しながら、新たなものを生み出していくのは本当に難しい。リーダーとして実感した反省点を、今後につなげていきたいです」と、今野遼太さん(同4年)。成功体験だけでなく、失敗や反省も糧にする。そこにEプロの大きな意義がある。

<平成29年度に採択された主なプロジェクト>

1)学内バリアフリー調査プロジェクト
(Make up! バリアフリー:メンバー数9人)
視覚障がい者向けに、学内の障壁、改善点などを調査。昨年作成したバリアフリーマップに関し、継続調査を行い改善を図る。

2)Hashigoプロジェクト
(yurueユルイー:メンバー数5人)
昨年度の活動から得られた改善点をもとに、派生して生まれた『女の子のための地域情報発信メディアアプリHashigo』を開発・公開する。

3)むすびプロジェクト
(復興girls&boys*:メンバー数20人)
沿岸地域・企業の復興現状を再認識し、冊子を作成。外部に発信することによって震災風化防止と沿岸地域・企業の魅力発信を図る。