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多文化共生の地域づくり

岩手県立大学は「国連アカデミック・インパクト(※)」に加盟して、グローバルな視点から地域課題に向き合う取り組みを進めています。その一つとして掲げているのが、「異文化間の対話や相互理解の促進」。外国人の人材登用が進み、日常的に外国人との関わりが増えていく中で、我々はどのように向き合っていけば良いのか。岩手県内の自治体と協力し、地域が抱える問題を調査・研究している教授たちの活動をご紹介します。

地域で暮らす外国人が抱える問題を調査し、「多文化共生の地域づくり」を考察する

 岩手県内には、7203人(2021年12月現在)の在住外国人が暮らしています。その出身国は60カ国以上にのぼり、永住者、日本人の配偶者、技能実習生、留学生など、立場も様々。県土が広いため各地域に散在して暮らしており、言語や文化、慣習の違いなどから孤立する場合も多く、様々な問題が生じています。

 こうした状況で求められているのが、「多文化共生」という考えに基づいた地域づくりの実現です。これは、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の一員として共に生きていくこと。しかし、実際には、国際交流イベントなどで一時的な交流は持っても、継続的な関係づくりまでは至っていないのが現状です。

 「住民という点では、外国人も私たち日本人も同じ。仕事、子育て、医療、貧困など、同じ問題を抱えているのに、情報弱者のためにサービスが行き届かないんです」と訴えるのは、社会福祉学部の細越久美子教授。盛岡短期大学部の熊本早苗准教授、吉原秋准教授、看護学部のアンガホッファ司寿子准教授らと共に、

受け入れ側の住民の現状と外国人が抱える諸問題についての調査・研究に取り組んでいます。震災時の支援活動の聞き取り調査に始まり、北上市の外国人母子保健、奥州市の医療通訳ボランティア派遣、外国人住民の支援拠点となる国際交流協会や日本語教室の実態調査などを行ってきました。

 また、細越教授は、共通教育科目で「異文化間接触と多文化共生」という授業を通し、研究成果を学生たちに共有したり、留学生と日本人学生との交流イベントの開催や、外国人住民や支援に携わる人たちとの交流も行うなど、外国人と頻繁に関わり、理解を深めることができる場を設けています。

「日本に住む外国人と受け入れ側である日本人の間には、見えない壁のようなものが存在します。語学のスキルも大切ですが、外国人と積極的に関わろうとするマインドや態度を身につけることがもっと重要です。これから外国人が増えていく中で、こうしたマインドを持った学生たちが、医療・保健、福祉、行政、企業などの現場で活躍してほしいと願っています」と、細越教授。互いの違いを認め合い、対等な関係を築いていくことで、誰もが幸せに暮らすことができる地域をつくっていく。そのためには、まず心の壁を取り払うことから始めていかなければならないのではないでしょうか。

「言葉や文化は違っても、最終的には人と人の付き合い。身振り手振りでもいいから、伝えよう、理解しようとする気持ちが大事です」と話す、細越久美子教授。

(※)国連アカデミック・ インパクト(UNAI)とは?

 国連アカデミック・インパクトは、各大学が社会貢献をしながら、国連と世界各国の教育機関の活動を連携させることを目的としたプログラムで、国内でも85機関が加盟(2022年1月現在)。岩手県立大学では、UNAIに関連する様々な取り組みが行われていることから、2019年5月に加盟しました。
 本学では[原則6:国際市民としての意識向上][原則8:貧困問題への取組][原則9:持続可能性(SDGs)の推進][原則10:異文化間の対話や相互理解の促進]、以上の4つの原則に取り組んでおり、異文化理解のためのイベントやワークショップ、海外留学を活用した社会課題を解決する学習プログラム、海外の大学とのSDGsの課題に関する活動を実施。グローバル社会における各地域や国、世界における大学の社会的役割を追求していきたいと考えています。

2021年度の国連アカデミック・インパクト活動報告書はこちら