ソウゾウLABO#05

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盛岡短期大学部 生活科学科大澤 朋子教授

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屋外使用木材の耐用年数評価のための温度・水分暴露量と腐朽の関係式の構築

Profile

東京都出身。東京農工大学農学部卒、東京大学大学院農学生命科学研究科(修士)修了。建材メーカー、設計事務所を経て、住宅の性能評価等を行う機関に勤めながら東京大学大学院農学系研究科博士課程を修了。2019年秋田県立大学木材高度加工研究所、2021年から現職。

授業の様子

大澤先生が研究に取り組む建築材料としての木材の耐久性に関して最近とりまとめた研究論文と博士論文。

建築材料としての木の可能性を探りたい・拡げたい

 一級建築士の肩書も持ち、二級建築士の受験資格取得に必要な科目を多く受け持つ大澤先生。専門は木質科学で、「木材の耐久性」をテーマに研究に取り組んでいます。
 「建築材料としての木材は温かみがあり周囲の自然と調和するという長所がある一方、割れが起きやすく、そこに水が入ると腐朽しやすい。そこで、さまざまな状況下での木材内部の含水状態を測定して可視化し、耐久性の評価や設計技術に役立てたいというのが、この研究の目的です」。
 大学時代、のちに恩師となる東京大学教授の集中講義を受け「木は、伐採しても植えることで循環できる唯一の資源」という言葉に感銘を受けたのが原点、と話す大澤先生。とはいえ、研究の道をまっすぐ歩んできたというわけではありません。
 「修士課程を修了し建材メーカーの研究職に就きましたが、クレームになりやすい天然素材の木材は避けられる傾向にありました。やっぱり木材に関わりたいという想いから国産材を使った木造住宅設計に興味を持ち、ほぼ独学で二級建築士を取得し、設計事務所に飛び込みました」。
 その後、木造住宅の調査研究・試験などを行う財団法人に転職した大澤先生。国の事業にも携わる仕事にやりがいを感じ、一級建築士にも合格するなど充実した日々を送る一方、より主体的に木材の可能性を探る研究への熱意が再燃。15年ぶりに大学院に戻り、仕事を続けながら博士課程を修了。秋田県で研究者としてのキャリアをスタートさせました。
 「スギが多い秋田に比べ、岩手の山は樹種が多様。アカマツなど岩手の樹木に着目した研究もしてみたい」と大澤先生。国産木材の利用価値を高めたいという想いがあるからこそ、大事にしているのが「データを活用し根拠を示すこと」。統計学の授業も受け持つ先生は「データの扱い方を身につけ、自分の考えを上手に伝えるツールにしてほしい」と話します。

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ソウゾウLABO#06

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ソフトウェア情報学部田村 篤史准教授

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AI技術による進路指導変革を目指した
情報系学部の進路選択支援システムの開発

Profile

愛媛県生まれ、長崎県対馬育ち。福岡県内の高校を卒業後、東京理科大学理工学部数学科に進学。同大学大学院理工学研究科数学専攻(修士)、同科学教育研究科科学教育専攻(博士)修了。私立栄光学園中学校・高等学校教諭を経て、2020年岩手県立大学に着任。

田村先生と研究室のゼミ生たち

2022年に、同じソフトウェア学部の児玉研究室とともに盛岡白百合中学校・高等学校との「教育DX高大連携」の協定を締結。双方の進路意識や学習意欲の高揚を図ることを目的としています。

知識や能力を、誰かのために。それが自分にも還ってくる。

 数学(幾何学)と数学教育を専門とし、中高一貫の進学校で教諭を務めた経歴を持つ田村篤史先生。2022年度からソフトウェア情報学部に新設された、学部及び数学教職課程の必修科目「集合と位相」などを担当しています。
 「位相とは、集合に加えた何らかの数学的構造のこと。位相空間にもっと強い条件を与えた距離空間というものがあります。距離にも様々ものがありますが、例えば、地面に長くまっすぐな線を引いたとします。でもその線をはるか上空から見ると、地球の丸みに沿ってカーブしているはず。そう考えると、距離を求める三平方の定理も球面の上では当てはまりません。球面上では平行線も存在しませんし、相似な三角形も存在しません(合同除く)。しかし非常に豊潤な数学的内容をもっていて、研究室の学生がその発見に臨んでいます」。
 こうした数学的思考や知識をデータサイエンスにも活用し、学習支援や教材開発に取り組む田村研究室。そのひとつが、進路選択に悩む学生を支援するシステムの開発です。
 「進路に悩み休学・退学してしまう県大生を減らしたい、というのがこの研究の原点。400を超える全国の情報系学部から教育方針などのデータを集めて『求められる学生像』を分析。それらのデータに意思決定理論やチャットボット(自動会話プログラム)などを活用し、学生一人ひとりの適正や指向を踏まえた進路選択を支援できればと考えています」。
 そんな田村先生が、研究や指導をする上で大切にしているのが「自分が持っている知識や能力を他者に還元する」ということ。「人の役に立つ喜びは活力になり、時に自分の能力以上の力を引き出してくれる。私も、研究室の学生に日々刺激をもらっています。みんな大人しいけれど、素晴らしい発想力を持っている。彼らの可能性にワクワクしています」と笑顔を見せました。

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