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性に関わる学びと活動

岩手県立大学は「国連アカデミック・インパクト(※)」に加盟して、グローバルな視点から地域課題に向き合う取り組みを進めています。その一つとして掲げているのが、「持続可能性(SDGs)の推進」。異なる価値観を持った相手を理解することは、互いを認め合い、尊重することにつながります。今回は、「性」をテーマとして、性の多様性や問題について学び合う、学生たちの活動をご紹介します。

「性」に対する問題意識をみんなで共有、大学生全体の意識・関心を高める活動を

 私たちは生まれた瞬間から、「男女」に分けられ、そのくくりの中で育てられてきました。しかし近年、「身体の性」と「心の性」が一致しないトランスジェンダーや、性的指向が多様なセクシュアルマイノリティなど、様々な価値観があることを知る機会が増えています。また、体のメカニズムや異性との交際に関わる問題など、学校での性教育についても正しい知識を伝える重要性が議論されています。

 こうした性に関わることを学び合い、知識と意識を高めるため、看護学部の学生が中心となって立ち上げたサークルが「7Life(セブンライフ)」です。「保健体育の授業で性の知識を学んだつもりではあったんですが、実際に自分が交際を始めた時に知らないことがたくさんあると気づいたんです。そこから、日本の性教育そのものに関心が生まれ、もっと学びたいと考えるようになりました」と話すのは、代表の山田真帆さん(看護学部3年)。自分の考えを教員に話したところ、「学生同士で学んでみたら?」と後押しを受け、石本早紀さん(看護学部3年)と一緒にこのサークルを立ち上げました。

 メンバーは、看護学部と総合政策学部の学生17名。月1回の勉強会では、担当となった学生が関心のあるテーマを取り上げて資料を発表し、みんなで議論しながらテーマについて掘り下げます。例えば、セクシュアルマイノリティを表すLGBTのこと。例えば、月経のことや避妊のこと、日本の中高生の性教育の現状についてなど、勉強会のテーマは多岐にわたります。

 「サークルを通して様々な知識に触れ、いろいろな活動をしている人と出会うことで、新たな輪が広がっています。看護とは違う学びを得ることが楽しいですし、意識が変わりました」と、石本さんは話します。普段の勉強会はメンバー内での活動ですが、一般学生の参加を呼びかける会も開催するほか、2021年度は図書館とコラボして性に関連する様々な本を紹介するコーナーも企画しました。多くの学生が本を手に取り、関心が高いこともわかったといいます。

 「サークル名にLifeという言葉を入れたのは、性について考えることは自分の人生について考えることだから。性は、命や個人の尊厳にも関わる大事なことです」と山田さん。多様な価値観を学び、自他の生き方を認め合うことは、相互理解を深める上で大切なこと。他大学との連携や中高生への性教育も視野に入れながら活動を通して学びを深めています。

右から「7Life」を立ち上げた山田真帆さんと石本早紀さん。サークル名の「7」は多様性を象徴する虹を表す数字と教えてくれました。

(※)国連アカデミック・ インパクト(UNAI)とは?

 国連アカデミック・インパクトは、各大学が社会貢献をしながら、国連と世界各国の教育機関の活動を連携させることを目的としたプログラムで、国内でも85機関が加盟(2022年1月現在)。岩手県立大学では、UNAIに関連する様々な取組が行われていることから、2019年5月に加盟しました。
  本学では[原則6:国際市民としての意識向上][原則8:貧困問題への取組][原則9:持続可能性(SDGs)の推進][原則10:異文化間の対話や相互理解の促進]、以上の4つの原則に取り組んでおり、異文化理解のためのイベントやワークショップ、海外留学を活用した社会課題を解決する学習プログラム、海外の大学とのSDGsの課題に関する活動を実施。グローバル社会における各地域や国、世界における大学の社会的役割を追求していきたいと考えています。

2020年度の国連アカデミック・インパクト活動報告書はこちら