メッセージ

日本国民ひいては世界人類の誇りとするに足る大学に

首都大学東京学長
岩手県立大学名誉学長 西澤潤一

 おめでとうございます。私は今でも、岩手で仕事させていただいたことが私の誇りであり、また最も精神的に充実した時代であったと思っております。
 この大学が非常に大事な環境の下に出来たということは、日本にとって、あるいは世界にとって、大変大きなことだと思っております。当時の工藤知事さんのご卓見があって、県としてのひとつの野望として、ひとつの大学をつくりたいということを長い間あたためておられたわけであります。どういうわけか私が、そういうことを実際にやらせていただくことになったわけです。これは私にとって大変ラッキーなことだったと申し上げてよろしいかと思います。
 平素から、私は、だいたい大学を出たあたりから、宮沢賢治先生の文学に大変のめりこんでおりまして、いろんなことを勉強するチャンスがあったわけでございますけれども、やはりこのようなすぐれた考え方、哲学というものは世界に通用するものではないかと考えております。このごろいろいろな事件が、国際的に起こっております。知の世界というものは、どうやら欧米の方が先行していたようでございますけれども、けっして世の中のすべてを知が牛耳ることができるものではない。やはり、その根本にありますところの、いわゆる大きく言えば心の問題というのがなければ、知の技術というものが十分に生きていかないものだと思っております。しかし、現実社会では、まだそれはなかなか理解されていない。本来もっと深く、世界中がこれを理解してくれなければいけない。私は早くから、広く世界に向かって岩手の心をアピールする大事な時期が来ているということを感じておりました。
 東京に出てから知ったことですが、朝日文庫に王敏 (ワンミン)さんという方が書かれた『謝々(シェシェ)!宮沢賢治』というものがありまして、著者は中国浙江省の政界の重鎮のご令嬢ですが、中国人にもこれだけ宮沢賢治を受けとるだけの素地があるのだということをよく理解することができたように思っております。こういう方々のつながりをひとつのきっかけとして、世界がまさに精神革命を起こさなければいけない時期が来ているのではないかというふうに考えているところでございます。
 宮沢賢治文学ができて、それで多くの方々が啓発されたというよりむしろ、ここにそういう文化があって、それがまとめられたものが宮沢文学であるというふうに私は考えているわけでございますが、そういう大きな心の学問があるが故にこれだけの大学の成果が海外で認められることになったのではないかと考えているわけです。これからも、本学の成果は世界中の人たちに次から次へと理解されていくことになってくると、私は、確信をしているわけでございます。
 私は、本学が齢20年を迎えるときには、岩手県民の誇りのみならず、日本国民ひいては世界人類の誇りとするに足る大学に成長してくれるものと心から期待しているということを申し上げまして、10周年のお祝いとさせていただきたいと思います。