- 地域に貢献する、開かれた大学を目指して
- 研究活動、および研究成果の還元による地域貢献の取り組み
- column1:地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)
- i-MOS 研究課題
- 地域政策研究センターの研究課題
- column2:ICTを活用した孤立防止と生活支援型コミュニティづくり
岩手県立大学は「地域の活力創出に貢献する大学」を実現するために、[産学公連携の強化][県民のシンクタンク機能の強化][県民への学習機会等の提供]など、様々な地域貢献活動に重点的に取り組んでいます。
研究・地域連携本部に設置されている「いわてものづくり・ソフトウェア融合テクノロジーセンター(i-MOS)」、「地域政策研究センター」では、企業や県内市町村、関係団体等との共同研究等に取り組み、産学公連携の推進、県民のシンクタンクとしての機能の発揮に努めています。さらに「地域政策研究センター」においては、震災復興に資することを目的に、平成26年度に「東日本大震災津波からの復興加速化プロジェクト」を立ち上げ、本学の複数学部に属する教員たちが2ヵ年度にわたって取り組むプロジェクト研究を開始。平成28年度現在、3つのテーマで研究を推進しています。
この他にも各学部のプロジェクトにより、震災復興を中心とした地域の再生や活性化に貢献する研究活動を推進。ボランティアバスを運行して被災地支援活動を実践したほか、学生による災害復興支援ボランティア活動をバックアップするなど、継続的に行える制度や環境を整えています。
平成27年度もこれまで通り外部資金の獲得に向けた取り組みを進めてきました。
共同研究は前年度の52件(27,057千円)から71件(17,864千円)と件数は増えましたが、受入額は減少しました。一方、受託研究等は前年度の32件(122,095千円)から29件(138,487千円)と件数は減少しましたが、受入額は増加しました。
また、科学研究費についても獲得に向けた環境整備と取り組みの強化を進め、平成27年度は14件が新規採択となりました。
なお、県民の学習ニーズに対応し、研究成果を地域に還元するため、滝沢・宮古の各キャンパスや盛岡西口のアイーナキャンパスのほか、平成27年度は洋野町など2地区に出向き、あわせて37の公開講座を実施。2,127人が参加しました。
●平成27年度公開講座
◆滝沢キャンパス講座
「もっと知りたい!~世界や日本、岩手の今~」をテーマに7講座を開催
講座 | 日時 | 講師 | テーマ |
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講座1 | 7月18日 | 岩手県立大学 学長 鈴木厚人 |
国際リニアコライダー(ILC)計画とは |
講座2 | 7月25日 | 高等教育推進センター 教授 ウヴェ・リヒタ |
日本人と中国人のコミュニケーション ~孔子の正名論と万葉集の言靈から学ぶ~ |
講座3 | 総合政策学部 准教授 見市 建 |
「地域」から考えるイスラーム | |
講座4 | 8月1日 | 岩手医科大学附属病院 看護部長 三浦 幸 氏 |
人をケアすること人からケアされること |
講座5 | ソフトウェア情報学部 教授 土井 章男 |
3Dプリンタの基本的な原理とその応用 ~3Dプリンタの仕組みと機能、長所短所、今後の応用分野~ |
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講座6 | 9月5日 | 総合政策学部 准教授 伊藤 健宏 |
経済学のトビラをあけてみよう! ~世の中を経済学の目で見るということ~ |
講座7 | 盛岡短期大学部 准教授 熊本 早苗 |
躍動する世界の女性たち ~環境正義から学ぶ女性の新たな力~ |
◆宮古キャンパス生涯学習講座
地方創生フォーラム「宮古で暮らす、未来をつくる」
講座 | 日時 | 講師 | 内容 |
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基調講演 | 11月29日 | 岩手県立大学 学長 鈴木厚人 | 岩手県立大学からはじまる地方創生 |
パネル ディスカッション |
宮古市長 山本 正徳 氏 | 地方創生からはじめる宮古 | |
学長 鈴木 厚人 | |||
副学長兼地域連携本部長 柴田 義孝 | |||
宮古短期大学部長兼地域政策研究センター長 植田 眞弘 |
◆地区講座
講座 | 日時 | 講師 | テーマ | 場所 |
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滝沢市・睦大学 連携講座 |
9月7日 | 看護学部 准教授 千田 睦美 |
認知症とどう付き合うか -認知症の理解と予防- | 滝沢市公民館 |
ひろの町民大学 連携講座 |
2月20日 | 社会福祉学部 教授 宮城 好郎 |
予習のチカラ -自分自身の介護を予防「予習」し、生きがいを持ちながら地域で暮らす- | 洋野町民文化会館 |
COC
本学では、平成27年度に岩手大学との協働により策定した「ふるさといわて創造プロジェクト」が採択され、同時に、地域志向教育の推進に向けた全学部共通の副専攻の設置等の教育改革により「地(知)の拠点大学(COC大学)」の認定を受けました。
この事業は、教育課程としての副専攻「いわて創造教育プログラム」のほか、岩手県内の魅力ある就職先を開拓し地元定着を誘導するための「若者・女性の地域定着」「新産業&雇用創出」「三陸復興&先導モデル創出」「起業家人材育成」の各プロジェクトで構成され、インターンシップの拡充や滝沢市IPUイノベーションセンターとの連携強化により、卒業生の県内就職率の向上と新規雇用創出に向けて取り組んでいます。
i-MOSはものづくりとソフトウェアの融合による新たなイノベーションの創出拠点として平成23年4月1日に設置され、産学共同研究の推進や高度技術者の養成、設備機器の開放による企業試作開発の支援などに取り組んでいます。i-MOS研究課題は、①ものづくり、ソフトウェア技術を活用して岩手県の地域特性を踏まえた社会課題の解決②ものづくり関連企業の生産性向上、付加価値向上③自動車産業への展開を目的とした研究を行っています。
◆平成28年度採択課題
No. | 研究課題名 | 研究代表者 | 所属 |
---|---|---|---|
1 | ユニバーサルツーリズム安心システムの社会実装に関する研究 | 教授 阿部 昭博 | ソフトウェア情報学部 |
2 | 教育用測定機器の研究開発 | 講師 三浦 奈都子 | 看護学部 |
3 | 高齢者ドライバーのヘルスモニタリングを考慮した高齢化社会における交通事故防止システムの構築 | 教授 藤田 ハミド | ソフトウェア情報学部 |
4 | 看護学生フィジカル・アセスメント学習支援システム | 教授 村田 嘉利 | ソフトウェア情報学部 |
5 | 局所的通信システムにおける光強度に基づくデバイス間の相対位置推定 | 准教授 新井 義和 | ソフトウェア情報学部 |
6 | 産業利用を想定したBluetooth Low Energyによる受発信混在型測位 | 准教授 岡本 東 | ソフトウェア情報学部 |
7 | 人感センサ付き Web カメラによる農作業と野生動物の自動撮影・通知システムの開発 | 准教授 高木 正則 | ソフトウェア情報学部 |
8 | カテーテル治療シミュレーション機能を搭載した術前計画支援システムの開発 | 教授 土井 章男 | ソフトウェア情報学部 |
9 | 運転者支援システム開発のための自動車運転データに基づく個人運転行動の認識とモデリングに関する研究 | 教授 バサビ・チャクラボルティ | ソフトウェア情報学部 |
10 | 専門家の選択的注視機能を利用した高効率機械学習による自動運転車の実現 | 教授 ゴウタム・チャクラボルティ | ソフトウェア情報学部 |
「実学・実践重視の教育・研究」を基本的方向のひとつとする岩手県立大学では、県民のシンクタンク機能のさらなる充実強化をはかるために、地域政策研究センターを設置しています。「地域目線」で県民が抱える課題・ニーズに向き合い、多様な専門分野の研究者らが、自治体やNPO、企業との協働により、地域課題等を解決するための研究を行っています。
●東日本大震災津波からの復興加速化プロジェクト研究
岩手県の最重要課題である「震災復興」に取り組む地域政策研究センターでは、被災地のニーズの多様化や諸問題の解決に対処するため、平成26年度から「より直接的に被災地の復興に寄与する研究」にシフト。大規模かつ複数年度にわたって取り組む研究を進めています。
◆平成27年度採択 東日本大震災からの復興加速化プロジェクト 採択課題一覧表 【研究期間:H27年6月~H29年3月】 | |||
No. | 研究課題名 | 研究代表者 | 所属 |
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1 | さんりく沿岸における復興計画の3Dモデル化と人材育成 | 教授 土井 章男 | ソフトウェア情報学部 |
◆平成28年度採択 東日本大震災からの復興加速化プロジェクト 採択課題一覧表 【研究期間:H28年6月~H30年3月】 | |||
1 | ICTを活用した孤立防止と生活支援型コミュニティづくり-釜石モデルをもとに岩手県全域での普及を目指して | 教授 小川 晃子 | 社会福祉学部 |
2 | 岩手県沿岸地域における水産加工流通業等のバリューチェーン強化による復興促進効果の解明 | 准教授 新田 義修 | 総合政策学部 |
●地域協働研究(教員提案型)
岩手県立大学の教員(研究者)が地域団体等(県・市町村等の公共団体、地域団体、NPO、企業等)と行う共同研究を対象とし、研究者自らが提案する地域ニーズに対応した研究を行います。
◆平成27年度 地域政策研究センター地域協働研究(教員提案型・後期) 【研究期間:H27年11月~H28年10月】 | |||||
No. | 研究区分 | 研究分野 | 研究課題名 | 研究代表者 | 所属 |
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1 | 一般課題 | 地域社会研究 | 岩手県内の糖尿病透析予防指導における体制と看護の実態調査 ―岩手県内の糖尿病透析予防指導における看護の質向上のための教育システムの構築に向けて- | 藤澤 由香 | 看護学部 |
2 | 一般課題 | 地域社会研究 | 滝沢市巣子地区における防風林樹木のカルテ化および産業遺産としての再評価 | 島田 直明 | 総合政策学部 |
3 | 一般課題 | 地域社会研究 | ご当地検定用作問支援システムの研究開発 | 高木 正則 | ソフトウェア情報学部 |
4 | 一般課題 | 地域マネジメント研究 | 岩手産食材を活用した商品作りによる付加価値創出とバリューチェーンを通じた価値獲得プロセスの考察―岩手県企業のビジネスモデル構築と地域活性化に向けて― | 近藤 信一 | 総合政策学部 |
◆平成28年度 地域政策研究センター地域協働研究(教員提案型・前期) 【研究期間:H28年6月~H29年3月】 | |||||
1 | 一般課題 | 地域マネジメント研究 | 省エネルギー水質浄化法である伏流式人工湿地ろ過システムの岩手県内における普及に向けたさらなる知見の集積と発信 | 辻 盛生 | 総合政策学部 |
2 | 一般課題 | 地域社会研究 | DMO形成を見据えた三陸観光における情報の戦略的利活用に関する研究 | 阿部 昭博 | ソフトウェア情報学部 |
3 | 一般課題 | 地域社会研究 | 地域住民との協働による絶滅危惧種ヨコハマシジラガイの保全工法の試行 | 鈴木 正貴 | 総合政策学部 |
4 | 一般課題 | 地域マネジメント研究 | 地域国際化のための外国人女性の出産と子どもの受診に対する医療環境整備へ向けた取組に関する研究 | 石橋敬太郎 | 盛岡短期大学部 |
●地域協働研究(地域提案型)
多様な専門分野の研究者を擁する岩手県立大学に対して、県内の地域団体等(県・市町村等の公共団体、地域団体、NPO、企業等)が抱える課題を地域課題としてご提案いただき、そのあとの本大学の研究者とのマッチングを経て、共同研究を行います。
◆平成28年度 地域政策研究センター地域協働研究(地域提案型・前期)採択課題一覧表【研究期間:H28年7月~H29年3月】
No. | 研究フィールド | 共同研究者 (提案者団体名) |
研究課題名 (研究計画策定後の課題名) |
研究代表者 | 所属 |
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1 | 二戸市浄法寺地区 奥州市江刺地区 北上市二子地区 |
岩手県農林水産部農村計画課 | 農業生産活動がもたらす中山間地域への波及効果について | 吉野 英岐 | 総合政策学部 |
2 | 岩手県盛岡市 神奈川県鎌倉市 |
(株)JTB東北法人営業盛岡支店 | 急増する外国人観光客の県内誘客促進、かつ満足度向上を図り、地域経済の活性化に寄与する「独創的ITシステム」の活用法を研究する | 蔡 大維 | ソフトウェア 情報学部 |
3 | 岩手町、宮古市 | 岩手町立川口中学校 | 中学生の活動を核とした「地域のつながり」再生による地域減災システムの構築 | 伊藤 英之 | 総合政策学部 |
4 | 岩手県 盛岡市周辺地域 一関市周辺地域 |
岩手県保健福祉部 岩手県社会福祉協議会 |
ICTの導入による保育業務効率化に関する研究 | 井上 孝之 | 社会福祉学部 |
5 | 盛岡市 | もりおか八幡界隈まちづくりの会 (株)悳PCM |
盛岡市内における空き家を含む遊休不動産の3Dデータベース化と、作成した データベースの地域活性化への活用方法の検討 | 倉原 宗孝 | 総合政策学部 |
6 | 岩手県全域 | 岩手県環境保健研究センター | 岩手県新人保健師研修の評価に関する研究 | 岩渕 光子 | 看護学部 |
7 | 久慈市山形町 | 久慈市山形総合支所産業建設課 | 久慈市平庭高原におけるシラカンバ林の再生 | 島田 直明 | 総合政策学部 |
8 | 二戸市福岡城ノ内 | 二戸市産業振興部商工観光流通課 | バーチャルリアリティを活用した九戸城跡の可視化に関する研究 | プリマ・オキ・ ディッキ |
ソフトウェア 情報学部 |
9 | 盛岡市 | 盛岡市保健福祉部長寿社会課 盛岡市老人クラブ連合会 |
老人クラブ活動の活性の方策に関する実証的研究 | 菅野 道生 | 社会福祉学部 |
10 | 盛岡市 | 盛岡市教育委員会 | 文化財庭園のメディアシステムによる記録保存活用とまちづくりへの活用 | 土井 章男 | ソフトウェア 情報学部 |
11 | 滝沢市 | たきざわ環境パートナー会議 | 滝沢市木賊川遊水地の希少生物の保全等に関する研究 | 豊島 正幸 | 総合政策学部 |
12 | 県内全域 (平泉地区、八幡平地区) |
岩手県保健福祉部地域福祉課 | 観光におけるユニバーサルデザインの実践について | 狩野 徹 | 社会福祉学部 |
13 | 宮古・下閉伊地域 | 岩手県沿岸広域振興局 | 「宮古・下閉伊地域流域基本計画(流域ビジョン)」の評価及び震災以降の沿岸地域流域の森・川・海における現状に即した「新・流域基本計画(宮古・下閉伊地域流域ビジョン)」の基本的方向性の提案 | 泉 桂子 | 総合政策学部 |
14 | 県内(地域保健及び産業保健関係機関) | 岩手県脳卒中予防県民会議 | 職域における健康・予防体制の整備に関する検討について 〜脳卒中等生活習慣病予防にむけた働き世代の健康支援体制整備に関する研究〜 | 松川久美子 | 看護学部 |
15 | 盛岡市、花巻市 | 有限責任事業組合まちの編集室 | 岩手におけるホームスパン文化を継承するための方策に関する研究 | 菊池 直子 | 盛岡短期大学部 |
16 | 宮古市、山田町 大槌町、釜石市 |
岩手女性史を紡ぐ会 | 歴史に学ぶ「女性と復興」〜昭和三陸大津波と家族、共同体〜総集編Ⅱ | 植田 眞弘 | 宮古短期大学部 |
17 | 三陸沿岸地域 | 岩手県政策地域部地域振興室 | 三陸沿岸地域における簡易的な観光マーケティング手法の構築 | 金澤 悠介 | 総合政策学部 |
18 | 盛岡市 | 盛岡市市民部男女共同参画青少年課 | 社会的ひきこもりの回復過程の考察及びロールモデルの作成 | 川乗 賀也 | 社会福祉学部 |
19 | 岩手町 | 岩手町立石神の丘美術館 | 石神の丘美術館屋外展示場における情報を活用した魅力向上の研究 | 阿部 昭博 | ソフトウェア 情報学部 |
20 | 盛岡市、東京都ほか | 盛岡市教育委員会歴史文化課 | 史跡盛岡城跡の歴史的建造物復元に向けて | 倉原 宗孝 | 総合政策学部 |
被災地では、孤立死や自殺を予防するため、震災直後から復興支援としてICT(情報通信技術)を活用した多数の見守りシステムが導入されました。しかし、なかには地域の人的な見守り体制としっかりつながっていなかったため、継続性に乏しいものも多く見られました。
こうした状況を背景に平成26年から2年間実施した「東日本大震災からの復興加速化プロジェクト研究」において、社会福祉学部の小川晃子教授をリーダーとする研究チームは、釜石市をフィールドに、人的見守りとICT見守り双方を重層化して見守り情報を一元化した見守りポータルサイトの有効性を実証しました。
平成28年度からも新たなプロジェクトとして活動を継続、そのモデル的な取り組みの岩手県内での普及を図っています。そして、高齢者等の確実な異変把握と対応がなされ、孤立し・自死の予防ができ、生活支援型コミュニティが形成されることにより、地域包括ケア体制が充実した社会を目指しています。