vol.80

岩手県立大学広報誌WEB版

このページは岩手県立大学広報誌「県立大Arch!」のWeb版です。
広報誌「県立大Arch!」の掲載情報をもとに作成されています。

グローバル理解入門 コミュニケーションツールとしての映像

グローバル理解入門 コミュニケーションツールとしての映像

映画監督・大友啓史氏講義
[2020年10月13日 滝沢キャンパス]

令和2年10月13日、滝沢キャンパスにおいて、岩手県盛岡市出身の映画監督、大友啓史氏を招き、「コミュニケーションツールとしての映像」というテーマで特別講義が行われました。講義後に行われた学生との懇談会の様子も合わせてご紹介します。

 今回の特別講義は、令和2年度から新設された副専攻「国際教養教育プログラム」のコア科目「グローバル理解入門」の授業の一つです。授業でグローバルに活躍する人物の話を聞くことを通じて、国際教養を身に付けることを目的としています。国際教養教育プログラムの全課程を修了した学生には、修了証と「国際教養士」の称号が授与されます。
 講義の始めに国際教育研究部長の劉文静教授から、講義のテーマと、岩手県盛岡市出身で、映画『るろうに剣心』や『3月のライオン』などの大ヒット作を手がけてきた大友啓史監督の紹介がありました。以下は講義の内容を抜粋してご紹介していきます。

大友啓史

1966年岩手県出身。慶應義塾大学卒業。90年NHK入局、秋田放送局を経てL.A.に留学、ハリウッドで脚本や映像演出について学ぶ。帰国後『ハゲタカ』、大河ドラマ『龍馬伝』などの演出を務める。2011年4月退局、ワーナー・ブラザーズと日本人初の複数本監督契約を締結する。2017年にオフィスオープラスを立ち上げ、海外での映像制作を視野に活動を広げている。

2021年7月/8月公開予定
『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』のチラシ

2021年7月/8月公開予定の『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』のチラシ

映像を通じたコミュニケーションの時代

今日のタイトルは「コミュニケーションツールとしての映像」です。みなさんの周りでもYouTubeとかやっている人はいますか? 今は僕らの時代より、映像が身近になっていますね。SNSなどで日常の風景を撮った映像が、海外の人にも見てもらえるような時代です。このコロナ禍で就職活動もオンライン面接になったり、ステイホームで動画配信サービスを使ったりする人も増えたと思います。映像情報の大海のなかでは、映像リテラシーがものすごく重要です。映像の作り方を少しでも知ることは、フェイクニュースなどから事実を読み取るチカラにもなると思っています。

講堂で行われた講義の様子

ローカルを突き詰めて世界に届くものを

NHKを退社して独立後に最初に手がけたのが、平成24年公開の『るろうに剣心』です。『るろうに剣心』はアクション表現が作品の大きなテーマでした。その後、『ミュージアム』では特殊造形やホラーテイストの表現、『3月のライオン』では将棋を題材に、心の中の感情、エモーションが見えるような表現など、様々なテーマに挑戦しています。令和2年2月に公開された『影裏』のテーマは「文学」です。映像的に面白いテーマだと思って挑みました。『影裏』は岩手県を舞台にした芥川賞作品で、「ローカル」というテーマも大事にしました。ローカルな何かを突き詰めていくと、国際的な何かにたどり着く。ローカルを顕微鏡で見ていくと、世界の普遍的な問題に至る場合もある、そう考えて撮影していました。コロナで(プロモーション等が)止まってしまいましたが、『影裏』は中国の映画祭に参加して賞をもらったり、台湾で公開されたりもしています。

学生から多くの質問が寄せられました

劇場で映画を体験し、様々な世界を知る

海外のコミュニケーションでは「あなたは何であなたなの?」と聞かれます。どこに所属しているかではなく、「こういう考えの人間です」と伝えなければならない。海外で認められるためには、自分で探りながら、社会とぶつかりながら、自分だけのオリジナルを見つけていくことが大事です。学生の皆さんにはそこを磨いて欲しい。そして、それを磨くために映画を活用して欲しい。映画館の大画面を観て音を聞いて、その迫力を体感して欲しいと思います。お茶の間のテレビから得られるものは「情報」ですが、劇場に足を運んで得られるのは「体験」です。劇場に行くという行動からは主体性が生まれます。ぜひスクリーンを通じて、色んな世界を知ってください。

懇親会で学生の質問に答える大友監督

講義のあと学生からの質問タイムが設けられました。
ソフトウェア情報学部の学生からは「監督の好きなアスペクト比は?」などの専門的な質問も飛び出しました。
講義後には懇談会も行われ、大友監督が約20名の学生の質問に答えたり、
色紙にサインをしたりと交流が行われました。
学生からは「映像業界に進みたいので、作品の考え方などが学べてよかった」、
「別世界の人だと思っていたが、気さくな方で同じ人間なのだと思えた」などの感想が聞かれました。

担当教員のコメント

国際教育研究部長 
劉 文静 教授

グローバル社会で活躍するためには、語学力だけではない自身の武器を創造することが必要です。大友監督は日本文化の要素を巧みに取り入れた映画で世界を魅了しました。監督のような岩手ゆかりのグローバルリーダーと、「グローバルとローカルの視点の融合」における経験や思いを交わす、学生たちにとって貴重な機会になったのではと思います。

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