vol.80

岩手県立大学広報誌WEB版

このページは岩手県立大学広報誌「県立大Arch!」のWeb版です。
広報誌「県立大Arch!」の掲載情報をもとに作成されています。

学生を守る・学びを守る withコロナ時代に対応した岩手県立大学の取り組み

新型コロナウイルスへの岩手県立大学の対応

令和2年1月に日本での新型コロナウイルス初感染が発表されて以降、同3月の全国小中学校への休校要請、同4月から5月にかけての緊急事態宣言の発出など、激動の1年となった令和2年。国の方針や全国的な感染状況を踏まえ、岩手県立大学でも前期の授業開始時期を遅らせたり、オンライン授業を行うなどの対応を行ってきました。
 「実学実践」を大学の基本的方向に掲げるなかで特に検討を要したのが、実践的な学びや資格取得のための学外実習の実施についてです。学外実習の代替として学内実習を行っても差し支えないこととする等の国の方針を受けて、県立大学の各学部や実習担当部署などでも、感染拡大を防ぎながら学生の学びを確保していくための方針や取り組みについて検討を重ねてきました。看護学部、社会福祉学部、盛岡短期大学部の事例と共に、県立大学の「学生を守る、学びを守る」取り組みについて紹介します。

岩手県立大学 コロナ禍における主な取組み 岩手県立大学新型コロナウイルス感染症対応アーカイブ(抜粋) 3月	学位記授与式の中止(3/25滝沢、3/18宮古) 4月	入学式の中止(4/3滝沢、4/6宮古)、授業開始の二度にわたる延期 5月 全ての科目の遠隔授業を開始(5/18)6月	全教科で対面授業を開始(6/22)「公立大学法人岩手県立大学修学支援給付金」を設立(申込み:第1回6/29〜7/20、第2回11/2〜11/16) 7月 「岩手県立大学未来創造基金」への協力依頼を呼びかけ「岩手県立大学新型コロナウイルス感染症対応指針」策定 11月 「インフルエンザ予防接種補助事業」実施(’20/11/9〜’21/1/29) 令和3年3月1日現在、学内での感染者は発生しておらず、感染拡大防止に最大限の配慮をした上で対面授業が行われています。

看護学部実習の方針と取り組み

学内で行われた「老年看護学実習」の様子 整形外科の術後の患者を想定した清拭(体を拭く)の場面では、「失礼します、おむつを交換しますね」など丁寧に声かけを行いながら実習が進められていました

看護師としての自覚と覚悟が問われるコロナ禍

 看護学部では通常、1年次から4年次にかけて、病院や介護施設等での実習が行われますが、令和2年度は受入れ施設の状況により、一部が学内実習に振り替えて行われました。それに加えて学内でも一度に集まる学生の人数を通常の半分に減らし、実際の患者に見立てたモデル人形を使うなど、感染対策を徹底した上で実習や授業が行われています。
 学内で実習を行うにあたり、教員のほぼ全員が看護職の現場経験をもつ岩手県立大学では、よりリアルな看護の場面に近づけるための教材提示が重視されています。リアルな事例設定に基づいてカンファレンスを行ったり、施設等からの外部講師を招いたり、映像教材を充実させるなど、例年とは違うアプローチも行われました。精神看護学実習では、学生が病歴や症状を聞き出すインタビューの際に教員が模擬患者となったり、在宅看護の実習では訪問看護の実習を住宅に見立てた設備がある大学内の実習室で行ったりと、学びに支障が出ないよう、また学生たちが不安に感じたりしないように工夫が凝らされています。
 例年とは異なる実習環境で学んだ学生たちが卒業し、看護の現場へと送り出すにあたり、継続的かつ親身なフォローや教育活動を行うことに加えて、病院や施設等との連携をより一層深め、県立大学として地域に貢献できるよう今後も取り組んで行きます。

手指消毒・体温測定

看護学部では、学部棟の出入口に消毒液と体温計を設置しているほか、すべての講義室、実習室に消毒液を設置。授業のたびにテーブルや教室内の消毒も行っています

看護学部 千田睦美教授
看護学部 千田睦美教授

コロナ禍においても学生たちは真面目に一生懸命学んでいます。今回あらためて、看護職を育成するためには地域の理解が不可欠だと感じました。より一層、県立大学として地域に貢献できるよう取り組まなければなりません。今後はコロナ禍を経て看護職を志願する学生たちも入学してくるでしょう。志のある人材を丁寧に育成していきたいです。

社会福祉学部実習の方針と取り組み

実習先との連携を深め、学生のサポートに注力

 社会福祉学部では例年、多様な資格実習※ が行われます。社会福祉士資格取得のためのソーシャルワーク実習は、岩手県を中心に青森、秋田、宮城の福祉施設や相談機関で実施されます。コロナ禍の令和2年度はワーキンググループを立ち上げ、国の動向や感染状況を確認しながら、学部方針や感染予防マニュアルなどを作成しました。また、実習教育開発室が、実習依頼に先立って各実習先に、個別に細かな確認や調整を行いながら実習先を決定していきました。全実習を学内実習にした大学が多い中で、これまで培ってきた実習先との協働の関係性が活きた結果です。しかし、感染拡大が進む中、実習中止に伴う再調整や学内実習に振り替えなければならない状況が発生。制限がある状況下でも実習体験ができ、最低限学ぶべきことは何なのか教員間で協議を重ねました。その結果、学内実習では、オンラインでの当事者家族へのインタビューや現場の専門職を招いての臨場感あるカンファレンス、実際の事例による支援計画の作成など、支援の専門職として「他者との関係性を通した学び」を確保することができました。三上邦彦教授は「震災のときもそうでしたが、生活課題、福祉課題に向き合いチャレンジするソーシャルワークの必要性を強く感じられたこと、教員のチームワークでコロナ禍に対応する姿を学生に見せられたことも、学びにつながったのでは」と話しました。

社会福祉学部の資格と実習※
  • 社会福祉士国家試験受験資格(ソーシャルワーク実習)
  • 精神保健福祉士国家試験受験資格(精神保健福祉援助実習)
  • 保育士資格(児童福祉実習)
  • 公認心理師国家試験受験資格(心理実習)
大学と実習先が連携しながら、学生・実習先・教員の3者の協働によって現場実習が行われています。
(左から)実習教育開発室の山崎陽史助教、櫻幸恵准教授、三上邦彦教授

(左から)実習教育開発室の山崎陽史助教、櫻幸恵准教授、三上邦彦教授
櫻幸恵准教授「コロナという災禍により、人間の安寧や幸福を追求し、人々の権利や生活を支える社会福祉の意義を教員も学生たちも再認識しました。」

精神保健福祉士養成実習風景

オンラインでの「精神保健福祉士養成実習」、仙台市の講師によるグループ実習が行われました

アイーナキャンパスにおいて行われた学内実習の様子

アイーナキャンパスにおいて行われた学内実習の様子。オンライン面談の相談者への質問内容検討などが行われました

盛岡短期大学部実習の方針と取り組み

感染を防ぎながら、学びの機会を確保

 盛岡短期大学部では、生活科学科食物栄養学専攻2年次に、学外の病院や高齢者施設、学校給食センターなどの給食施設において、栄養士免許取得に必須の給食管理実習(学外実習)が実施されています。県外では、栄養士課程の学外実習を学内の実習や演習で代替した大学もある中、履修者全員が2週間の学外実習を修了しました。令和2年度は、受入れ先施設との調整や、学生の県外移動の制限をし、例年行われる教員の巡回指導も、電話やメールによる確認に止めたケースもありました。学生は、授業が平常に近い形で行われること、そして学外実習に予定通り参加できることを願って、感染防止対策、そして体調管理によく取り組みました。

盛岡短期大学部 諸岡みどり准教授

看護学部作成のマニュアルを参考に、授業や実習の流れ、更衣や靴履き替えなど学生の行動も考慮した、学部独自の講義や実習時の消毒と健康チェックマニュアルを作成し、実施しています。特に食に係る専攻では必須である実習時間内の試食の機会が、感染リスクとなることを回避すべく、対策を行っています

学内で行われた実習報告会の様子

病院における実習、栄養指導の様子

学校給食センターにおける実習風景

コロナ禍における学生支援

ストレス下の学生に寄り添い、話を聞く「傾聴」を大切に

岩手県立大学宮古短期大学部
学生相談員 河野暁子さん(臨床心理士)

 令和2年度に入学した1年生は、授業がオンラインで行われ、友達づくりやサークル活動なども出来ず、わからないことがあっても聞けないという環境に置かれました。4月から新生活を頑張るつもりだったのに、「何のために勉強するんだろう?」という気持ちが湧いてきても不思議はありません。一度挫かれてしまうと再起にも時間がかかります。いつもよりもストレスのかかる状況で、気配りや細やかな声かけが必要でした。教職員向けに開催されたFD研修会では「傾聴」の方法をお話しました。丁寧に耳を傾けること、それだけで悩んでいる人への最大の支援ともなるのが「傾聴」です。教職員が一丸となって、学生に寄り添いながらコロナ禍を乗り越えていけたらと思います。

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