20年前の開学当初に掲げられた、岩手県立大学の「建学の理念」。それは、今まさにヨーロッパや東南アジアの国々が主体的に取り組んでいる「地域社会のための大学」づくりや、2015年の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の理念に通じるものだと、鈴木学長は語ります。2019年4月から就任二期目を迎えた鈴木学長に、大学が目指すべきこれからの姿について伺いました。
国連アカデミック・インパクトに加盟
東北での加盟機関は2大学
※東北大学、岩手県立大学(2019年5月現在)
大学には、人類の未来と社会の発展に貢献するという使命があります。「大学の社会的責任(USR,University Social Responsibility)」という言葉で表されますが、就任二期目を迎えた今、社会・地域の大学として「大学の社会的責任」の徹底および追求を行うことを目標に掲げています。
現代はグローバル化の時代です。海外に行くことだけが国際化ではありません。地球上に暮らす人類すべての課題を他人事ではなく、「明日は我が身」と捉える時代です。岩手県立大学においても国際化について考え、地域課題を世界的視野から判断できる学生を育てなければなりません。「大学の社会的責任」を国際展開するための一歩として「国連アカデミック・インパクト(UNAI)」への加盟を申請し、5月に承認されました。加盟機関は、定められた10原則のうち、1つ以上の原則に沿った研究や活動を進めることが求められています。岩手県立大学では、4つの原則に関与しています。
以前インドの大学に行った際に、インドネシアのスマトラ島の地震で津波が起きたことと関連して、東日本大震災津波における大学の活動をよく知っていて「ボランティアの情報などを共有したい」と言われました。国に捉われない、横の繋がりの重要性を非常に感じた出来事です。
日本で進んでいる少子化については、ヨーロッパから学ぶことがあります。日本では2050年頃に人口1億人を割るとの推計がありますが、今ドイツの人口は8千万人台です。フランスの人口は7千万人に届きませんが、経済政策や共働きのための子育て支援を行い、人口政策を進めたことで、先進国でも高い出生率を維持しています。男女格差社会の是正等も子育て支援には大切で、世界から学ぶことはたくさんあります。
大学のブランド強化をめざし、地域や企業との連携や教育力の向上を
4月には、「北いわての地域課題の解決及び産業振興に向けた岩手県立大学と岩手県との連携協力協定」を締結しました。地域課題の解決は、岩手県立大学がこれまでにも取り組んでいることです。北いわての課題は岩手の課題です。地元発信、ボトムアップの課題解決を支援することで、持続可能な社会の推進に繋げて行きたいと考えています。
持続可能な社会の推進のためには、超スマート社会「Society5.0」も視野に入れなければなりません。7月にKDDI株式会社と包括的連携協定を締結しました。5G/IoTのノウハウに関する研究や、学生への起業人材支援などが進められることになっています。
大学力、ブランド強化のために、岩手県立大学が真っ先に取り組むべきことが、学位や成績の可視化です。これまでに学位授与の方針(DP)や、教育課程編成・実施方針(CP)の明確化を進めており、現在は学修成果の評価方針「アセスメントポリシー」をまとめることとなっています。教育の質の向上と、教育力の可視化、それと同時に大学スタッフの専門性を高めるために、柔軟な大学組織を構築する取組を進めています。