ソウゾウLABO#01

看護実践研究センター 委員長 高橋教授の講義

Facility

看護実践研究センター

theme

岩手県の看護の質の向上と県民の健康増進

Outline

岩手県民の健康増進とQOL(※)および岩手県の看護の質の向上に寄与するため、2010年に設立。自律した看護職の継続教育、看護学の実践分野に関する調査研究を行うことを目的とし、2011年より岩手県新人看護職員研修事業を受託し、企画運営を行っている。
※QOL:クオリティオブライフの略

ウォーキングイベントの様子

滝沢市健康ダンス
「イ・ン・ダ」椅子バージョンの制作

滝沢市と協同で作成したパパやママのための沐浴動画

岩手のシンクタンクとして、看護技術の向上や住民の健康をサポート

 看護師になったものの、実際に働き始めると日々の業務に追われ、スキルを磨く時間が取れない人も多くいます。特に小・中規模の病院は自施設において、じっくりと研修期間を取ることさえ難しいのが実情です。看護実践研究センターでは、看護師たちに学びの機会をつくり、看護の質を高めるための教育や看護研究の支援などを通じ、岩手県民の健康増進に取り組んでいます。
具体的に実施しているのは、主に三つの事業。一つは岩手県の委託を受け、新人看護師の合同研修を始め、新人を指導する教育担当者や指導者への研修など、対象別にプログラムを設け、研修の全てを企画・運営しています。特に今年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた患者・家族をケアする医療者向けの選択プログラムも用意するなど、現場ニーズに合った柔軟なサポートを行っています。
二つ目は、看護職継続教育支援プログラムとして基本的看護技術、がん看護、精神看護、糖尿病看護等のスキルアップ研修や、養護教諭、保健師、介護職向けの研修など、専門別の研修を開催。研究支援に関しては、要望のあった病院に出向いて出張講義なども行っています。
そして三つ目は、県民の健康増進とQOLに寄与するための地域貢献事業です。本センターでは、今年度から滝沢市と連携。看護学部の専門スキルを活かせる事業を検討し、健康ダンスの普及活動やウォーキングの促進活動、初めての子を迎える父母への支援など、教職員と学生が一緒になって様々な活動に取り組んでいます。今後は、その効果を滝沢市と協働して検証していく予定です。
本センターは、このように幅広い事業を通じ、臨床現場や市町村とのネットワークを築いていくことで、看護における岩手のシンクタンクとしての機能を深めています。

ソウゾウLABO#02

Cast

社会福祉学部人間福祉学科泉 啓いずみ ひらく准教授

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依存症の医療史と依存症者のアイデンティティーの変容

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埼玉県出身。法政大学文学部卒、東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。同研究科助手を経て、2017年に岩手県立大学社会福祉学部の講師に就任。休日は、鳥が大好きな9歳の長男と5歳の次男と一緒に森に出かけ、散策や野鳥観察を楽しんでいる。

アルコール依存症に関する研究論文と、研究するアルコホーリクス・アノニマスのテキスト。

ゼミの様子

弱さを認め変容する人間のプロセスを、世の中に公開していく

 ダメだと思いつつ、なぜそんな行動をしてしまうのか。どうやって過ちを認め、アイデンティティーの変容を受け入れていくのか。「人間の弱さや頑迷さに関心があるんです。それとそれを正そうとしてきた医学の歴史にも」と話す泉啓准教授は、アルコールや薬物などの依存症に関する医療の歴史と、依存症を抱える当事者へのインタビューを研究の柱に据えています。
医療や社会福祉の領域に属する研究者の多くは、依存症の人々の性格や病歴に共通項を見出そうとしますが、文学部出身の泉准教授は「インタビュー」というアプローチから依存症に対峙。その前提にあるのが、「一人ひとり違う」というスタンスです。「人によって育った環境も違えば、依存症になった経緯も体験も、回復の仕方も違う。言わば、ライフヒストリーが違うんです。共通項を探るのではなく、あえて“違いは何か?”ということに焦点を当てています」。
泉准教授が特に注目するのは、世界的な自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス」が示す12ステップの回復プログラム。そのうち、[傷つけた人々へ埋め合わせ(償い)をする][弱点を把握し過ちを認める]という2つに重点を置いて、話を聞いています。「依存症の人が自分の弱さを受け入れ、公言できるようになるまではそれぞれ大変な道のりがあります。弱みを見せられない今の世の中で、弱さを自覚し、弱みを伝えていける社会にすることはとても大事。私はこれらの話を世に公開していくことで、問いを投げかけているのかもしれません」。
依存症とそうでない人の境目は、曖昧なグレーゾーン。誰しもが一線を越える可能性があり、身近なところに様々な問題が潜んでいます。泉准教授は学生たちに、周りや自分の中にあるマイノリティ性に目を向け、生きにくさを抱える人々の問題に関心を持ってもらいたいと願っています。