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キャリア教育

単に知識を吸収するだけでなく、仕事を意識して学問に取り組むことは、学生たちの進路に大きな影響を与えます。岩手県立大学では、基盤教育や各学部の専門課程において、様々なキャリア学習科目を取り入れています。今回は、企業や自治体と連携して行っている3学部のキャリア教育をご紹介します。

学生と企業のコラボでいわて牛を売り込め!

 2021年10月30日、盛岡駅ビルフェザンの1階広場「パティオ」で、いわて牛を紹介するパネルやいわて牛の特製弁当の販売ブースなどが設けられ、多くの人々で賑わいました。これを企画したのは、総合政策学部の学生たち。「キャリア・デザイン」の授業の課外活動として、学生有志がフェザンでのイベントに参加しました。
 この「キャリア・デザイン」とは、実社会でも通用する就業力を高めることを目的に、1〜3年次まで行われる授業のこと。集大成となる3年次には、盛岡駅ビル・フェザンや地元企業と協働し、商品開発などを行うプロジェクトに取り組んでいます。
 今年度はJA全農いわてが参画し、「いわて牛が地元・ゆかりの人に愛される仕組みを考えよう!」をテーマに、4月から7月の4か月間、3年生113名がPRの企画に取り組みました。学生たちは個別に企画を考えた後、グループに分かれ、いわて牛を取り巻く課題の考察やターゲットの設定、課題解決のための企画出しまで熱心に議論。グループごとにまとめた企画案は最終審査を行い、最優秀賞に決まった案は実現を目指して企画を進めています。
 また、この授業の一環として、学生有志を募り、フェザンで販促イベントも開催。学生たちは企画を検討し、親子連れで楽しめるクイズや塗り絵なども用意する等、イベントを盛り上げていました。
 「授業を通して企業と協働することは、地元企業を知る良い機会であり、学生に多くの発見や気づきを与えます。仕事のプロセスを体験することで、企画力や調整力、コミュニケーション力などが身につきますし、グループワークを通して組織で動く意識が芽生えます。また、企業にとっても、購買者層である若い世代の考えや感覚に触れる機会になると好評です。今年度でプロジェクトも7回目ですが、失敗を恐れずトライしようとする気持ちが育っていると感じますね」と、総合政策学部長の高嶋裕一教授。
 このように総合政策学部では、「キャリア・デザイン」の授業を通し、1年次から3年次まで段階的に学ぶことによって、社会に対する意識や考え方を深め、自ら発想し、行動できる力を育んでいます。

from Student

学生有志のプロジェクトリーダー

舘柳 明香里 さん

[総合政策学部・3年]

私はイベントの企画を手がけたのですが、どうすればイベントに興味を持ってもらえるのか…お客様の立場になって考えることの難しさと大切さを学びました。リーダーになったことで責任感が生まれ、スケジュール調整や仲間への連絡にも率先して動き、自主的に行動する力が身についたように思います。

from Company

 

尾形 泰道 さん

[JA全農いわて畜産販売課]

学生たちの提案は、大人とは違う視点のアイデアが多く、いろいろな気づきや学びがありました。このプロジェクトを通して、岩手の良さやいいものを知ってもらい、仲間と一緒に達成感を共有できること、人に喜んでもらえることの素晴らしさなど、仕事の価値を実感してもらえたら嬉しいですね。

岩手県産の原木ほししいたけを若者に知ってもらうPRとは?

 学生たちのキャリアを意識した取組は、盛岡短期大学部生活科学科の食物栄養学専攻でも行われています。コンビニエンスストアのお弁当やレストランのメニュー開発など、これまでも地元企業や自治体などと協働して、様々な商品開発を行ってきました。
 2020年度は、「岩手の農業」をテーマとした総合政策学部の「キャリア・デザイン」の授業と連携し、岩手県産乾しいたけを使ったレシピを考案。これをきっかけとして2021年度は、岩手県林業振興課からの依頼で、県産乾しいたけの販売促進事業に参加することになりました。具体的には、昨年度に考案した乾しいたけのレシピを活用し、調理動画とリーフレットを作成。有志の学生4名は、PRツールの検討を始め、先輩が考案したレシピのブラッシュアップと調理動画の撮影に協力しました。
 「乾しいたけは若い世代の消費量が少ないことから、学生たちに新たな宣伝・販売方法を検討してもらったのですが、我々では考えつかなかったアイディアもあり、新鮮でした。食材の魅力を理解した学生たちにPRしてもらうことで、乾しいたけに興味を持つきっかけになればと思っています」と、林業振興課・振興担当課長の田村聡さんは期待を寄せます。
 有志として参加した高谷佳織さん(2年)は、「もとのレシピをさらに改善するため、みんなで意見を出し合いながら何度も試作を重ねました。しいたけの味わいや食感を生かすよう調理するのは大変でしたが、動画撮影に携わることで貴重な経験をすることができました」と、振り返ります。

 

高谷 佳織さん

[盛岡短期大学部・2年]

 今回は課外活動での参加でしたが、行政や地元企業との協働は、学生が実社会の仕事に触れ、多くの学びを得る機会であると同時に、地域貢献にもつながる取組です。地域に根ざす大学として、今後も様々な地域の課題に取り組んでいきたいと考えています。

学生の動画撮影の様子、乾しいたけの魅力や上手な戻し方の動画

「乾しいたけのツナ・チーズのせ」

「乾しいたけ入りグラタン」

「乾しいたけ入り餃子」

「てりやきチキンと乾しいたけ和風ピザトースト」

課題を解決するシステムを自分たちの手でつくる

 ソフトウェア情報学部では、ICT/IoTを用いた新たなサービスを創出できる「イノベーション人材」の育成を目指し、学生の主体的な教育・研究・創造を促すため、実践的な学習プログラムを取り入れています。なかでも、第一線で活躍する企業のシステム技術者と新たなシステム開発に取り組むことができるのが、3年次に行われる「システムデザイン実践論」の授業です。
 令和3年度の課題解決のテーマは、コロナ禍のため学外ではなく「大学内」で探すことにしました。
まず、学生たちは大学内を歩きながら、気になる課題を発見。購買や食堂の混雑を可視化できたら、もっとスムーズに利用できるのではないか。体育館やジムの予約システムは作れないか…など、見つけ出した課題や解決するアイデアを、参加企業の提供技術を使って実際に開発。企画から設計、実装までの一連の流れを体験することができます。経験豊富な企業人と一緒に取り組むことで、実践的な仕事の流れが身につくと同時に、幅広い視点や発想を学ぶことができると、学生たちにも好評です。
 今回協力したのは、(株)イーアールアイ、(株)ゴーイング・ドットコム、東京システムズ(株)、(株)ぴーぷるの4社。「地域の人材育成に貢献することが第一の目的ですが、学生たちの新たな視点や発想に触れられることは、我々にとっても刺激になります。また、学生たちも自分の提案が形になるプロセスを体験できるのは、大きな学びとなるのではないでしょうか」と、企業担当者は口を揃えます。
 今後も企業の技術者と学生たちが直に議論する場を設けることで、学生たちのモチベーションを上げ、実際の仕事で必要となる問題発見能力や課題解決能力を育てていきます。

システム開発をグループで検討中

モブプログラミングの様子