① 解決を目指す課題(何を解決するのか)
“岩手県は豊かな食材に恵まれているが、最大限に活かしきれているのか”、“豊かな食材を活かした商品作りを行うことで地域をさらに盛り上げることができるのではないか”、との問題意識から、本研究テーマを設定し、調査研究活動を行う。先行研究を調べた限りでは、農業の6次産業化を中心に地元食材を活用した取り組みを取り上げている調査研究はあるものの、事例紹介にとどまっているものが多く、経営学(特に、経営戦略論)の観点から分析しているものが少ないこと、また岩手県の地元食材を活用した取り組みに焦点を当てている調査研究は少ない。そこで本調査研究では、①岩手県内企業が、地元食材を活用した独自の商品を開発することで付加価値を創出し、バリューチェーンを通して地域外の人々に岩手の魅力を伝えることで価値を獲得するプロセスを明らかにすること、②岩手県内企業の取り組みの現状・課題に着目し、今後のビジネスモデル構築の方向性について提言すること、ひいては③岩手県企業の岩手県産食材を活用した企業活動が岩手県の各地域の経済活性化へとつながる政策的提言を作成すること、を目的としている。
② 実施方法・取組みの概要
本研究は、理論研究及びフィールド調査の二本立てで行う。理論研究では、経営戦略論のフレームワークの一つである「バリューチェーン(価値連鎖)」の枠組みを用いて、岩手県産食材が企業活動のなかで付加価値としてどのように創出され、バリューチェーンを通じてどのように価値として獲得されていくのかを考察する。一方、フィールド調査では、岩手県産食材が企業においてどのように商品作りに活用されているのか実態を把握するため、岩手県内の食品加工業に属する企業、岩手県内の卸売業や小売業に属する企業などにインタビュー調査を行い、定性的データを収集する。インタビュー調査では、事前に依頼状・質問表を作成し、半構造化インタビューを実施する予定である。インタビュー調査では、付加価値の創出と、バリューチェーンを通じた価値の獲得で上手くいっている事例と上手くいっていない事例の比較研究を行うことで、付加価値の創出と価値の獲得の際の成立要件を明らかにする。また、県外において、付加価値創出の最大化などで先端的な事例についてインタビュー調査を実施することで、岩手県企業に対して提言作成を行う。
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