開学25周年巻頭特集

25th Anniversary

開学25周年記念式典の様子

彬子女王殿下による記念講演の様子

永年勤続表彰の様子

Next step after 25th anniversary 地域に未来に多様なアーチを

1998年に設立された岩手県立大学は、2023年に開学25周年を迎えました。
開学記念日に当たる6月19日には、彬子女王殿下をお迎えし、開学25周年記念式典が執り行われました。
地域に開かれた大学として、様々な地域課題の解決に取り組みながら、
地域の未来を担う若き才能を多数輩出してきた岩手県立大学。
25年の中で育んできた財産を、次のステップへとつなげていけるように。
卒業生のメッセージとともに、大学の未来を考えていきたいと思います。

タグラインを発表する学生の2人
(左:社会福祉学部 圃田咲弥さん、右:ソフトウェア情報学研究科 田尻隼人さん)

学生アトラクションでの津軽三味線演奏(中央:ソフトウェア情報学部 佐藤竜雅さん)

岩手を知り、世界とつながるグローバルな視野を持った人材を

 1998年4月の開学以来、「地域の大学」を掲げ、実学実践による人材育成や県民のシンクタンクとしての取り組み、地域のニーズを踏まえた研究活動などを進めてきた本学は、これまで16000人を超える人材を輩出。多くの卒業生が、国内外・県内外の地域の中核を担うポジションで活躍しています。
 25年の歩みを振り返ると、大きな転換点となったのが2011年に発生した東日本大震災津波。被災地にある大学として、ボランティアや復興関連研究が活発化し、現在もそうした知見や経験を生かして地域の防災力の向上を支援しています。また、「地域社会への貢献」と同等に重要視されている「国際社会への貢献」にも力を入れ、2019年には国連アカデミックインパクトに加盟したほか、副専攻教育で「国際教養教育プログラム」をスタート。こうした学びや活動を新たに展開しながら、グローバルな視野で地域課題に取り組む人材を育成しています。
 そして、さらなる未来に向けて、『地域に未来に多様なアーチを』というタグラインを制作。開学25周年記念式典で学生が発表し、節目の門出を飾りました。

大学との連携を保ちながら自分の成長につなげていく。

盛岡市立病院がん看護専門看護師・主任看護師

御供みとも 優子ゆうこさん

2003年3月 看護学部卒
2009年3月 看護学研究科博士前期課程修了

 院内の医療連携支援センターで、患者さんと医師、病院と地域の橋渡し役として、入退院支援や相談活動を担っている御供さん。大学を卒業後、看護師として働く中で、患者さんへの対応力の未熟さを痛感し、「もっと学びを深めて自分にできることを増やしたい」と大学院に進学。仕事と勉強を両立しながら、北東北初の「がん看護専門看護師」になりました。
  現在は、院外にもフィールドを広げ、仲間とがん看護の研修会を開催したり、本学大学院の非常勤講師として専門看護師の育成を支えるなど、精力的に活動しています。地域医療をより良くしていくためにも「岩手になくてはならない大学」であり、大学と関わり続けることで「良い影響を与え合い、生涯学び続けることができます」と話してくれました。

 高校生の頃からアナウンサーを目指していたという高橋礼子さんは、西和賀町の出身。過疎化・高齢化が進む町の様子から地域福祉に興味を持ち、社会福祉学部に進学しました。大学時代は、地域実習で限界集落の課題解決に取り組んだり、ダブルダッチのサークルに入って練習に熱中。「福祉では、相手の目線に立って考えることの大切さを。ダブルダッチではみんなでアイディアを出し合い、それを形にしていく面白さを学びました。大学での経験が今の仕事に通じることも多いですね」と、高橋さん。
 取材相手の思いをすくい取り、どう伝えたら視聴者の心に届けることができるのか。キャスターとして真摯に仕事に向き合う高橋さんの中には、大学時代から大切に培ってきたことが生きています。

大学での学びや数々の経験が今の仕事にも生きている。

岩手めんこいテレビ・アナウンサー

高橋たかはし 礼子れいこさん

2021年3月 社会福祉学部卒

大学との連携を保ちながら自分の成長につなげていく。

プロ棋士・四段

小山こやま 怜央れおさん

2017年3月 ソフトウェア情報学部卒業

 岩手県初のプロ棋士である小山怜央さんは、棋士養成機関「奨励会」を経ずにプロになった戦後初めての棋士です。釜石市出身の小山さんは、得意な数学を生かしたいとソフトウェア情報学部に進学。大学時代は、勉強と両立しながら、プロを目指して日々練習を重ねていたと言います。「一番の思い出は、勉強が難しくて苦労したこと。でも、自由にパソコンが使えたり、遅くまで研究に没頭できたり、学べる環境が充実していますよね」と、振り返ります。
 何度も挫折を経験しながらも、決して夢を諦めなかった小山さん。「将棋をやめずに、地道に努力を続けたからこそ今があります。学生の皆さんにも、自分がやりたいと思ったことに全力で取り組んでほしいですね」と、メッセージをくれました。

 法律への興味から総合政策学部で学んだ、藤根卓也さん。卒業後は大学の職員となって、総務・教務・企画など、様々な部署でキャリアを積んできました。その一方で、全国の公立大学職員対象の任意団体「公立大学職員ネットワーク」に参加し、他大学の職員との交流を広げ、現在はネットワークの代表幹事として活動しています。
 大学に軸足を置きながらも、常に大学の外の世界にも目を向けてきた活動の根底には、卒業生だからこその思いがあります。「大学内のことだけでなく、外に出て視野を広げることも大切。私自身が学生時代にできなかったからこそ、学生の皆さんには、自分の世界を広げ、俯瞰的に物事を考えられるような環境をつくっていきたいですね」と、藤根さん。卒業生として、職員として、大学のこれからを見据えています。

学生たちがもっと自由に、自分の世界を広げられるように。

岩手県立大学職員

藤根ふじね 卓也たくやさん

2008年3月 総合政策学部卒業

25th history

平成10年4月 岩手県立大学開学/西澤潤一学長が就任
盛岡短期大学を岩手県立大学盛岡短期大学部に改称
宮古短期大学を岩手県立大学宮古短期大学部に改称
第1回入学式
平成12年4月 岩手県立大学大学院
(ソフトウエア情報学研究科博士前期・後期課程、総合政策研究科博士前期課程)開設
平成14年3月 第1回卒業式
4月 岩手県立大学大学院
(看護学研究科博士前期課程、社会福祉学研究科博士前期課程、総合政策研究科博士後期課程)開設
平成16年4月 岩手県立大学大学院
(看護学研究科博士後期課程、社会福祉学研究科博士後期課程)開設
平成17年4月 公立大学法人岩手県立大学設立/谷口誠学長が就任
第一期中期目標・中期計画期間スタート
岩手県立大学地域連携研究センター設置
平成18年4月 アイーナキャンパスがオープン
共通教育センター設置
平成20年4月 学生ボランティアセンター設置
平成21年4月 中村慶久学長が就任
5月 滝沢村(現滝沢市)と地域経済分野に関する協定締結
滝沢村(現滝沢市)IPUイノベーションセンター開所
8月 看護学研究科に「がん看護専門看護師教育課程」設置
平成23年4月 第二期中期目標・中期計画期間スタート
災害復興支援センター設置
地域連携棟内に「地域政策研究センター」設置
8月 学生災害ボランティアセンター、いわてGINGA-NETプロジェクト発足
9月 いわてものづくり・ソフトウェア融合テクノロジーセンター(i-MOS)設置
平成24年2月 「復興girls*」が社会人基礎力グランプリ2012決勝大会で準大賞を受賞
平成25年4月 高等教育推進センター設置
平成26年3月 ソフトウェア情報学部の「プロジェクト演習」が経済産業省の「社会人基礎力を育成する授業30選」を受賞
4月 共通教育センターを高等教育推進センター基盤教育部として統合
7月 ラーニング・コモンズ「多目的スペース風のモント」開設
平成27年4月 鈴木厚人学長が就任
11月 ゲストハウス開設
平成28年4月 学生サポートサロン(アイプラス)設置
平成29年4月 第三期中期目標・中期計画スタート
平成30年7月 戦略的研究プロジェクト創設
平成31年4月 北いわて連携協力協定を締結
令和元年5月 国連アカデミック・インパクト加盟
令和2年10月 学生ボランティアサークル「風土熱人R」(ふうどねっとアール)が第73回岩手県社会福祉大会で県知事表彰受賞
12月 学生団体「Illumination Project with U」本学のシンボルツリー(ドイツトウヒ)イルミネーションを実施
令和3年4月 教職教育センター設置
10月 鈴木学長が文化功労者選出
令和4年4月 教学IRセンター設置
令和5年2月 県大Voters総務大臣表彰受賞
4月 第四期中期目標・中期計画期間スタート
防災復興支援センター設置

開学25周年特別番組
地域に 未来に多様なアーチを
〜これまでの25年とこれから〜

Youtubeチャンネルを御覧ください

 表紙ストーリー

 今号の表紙に登場してくれたのは、社会福祉学部の教員で第一期の卒業生でもある岩渕由美先生と、同じく社会福祉学部1年生の小軽米風花さん。二人は社会福祉学部の先輩・後輩であり、教員と学生の関係でもあります。
 岩渕先生は「先輩がいなかったので、学祭もサークルも自分たちでゼロから一つずつ作り上げていきました。錚々たる先生たちが揃っていたのですが、学生の自主性を尊重してくれて、自由にやらせてもらいましたね」と、当時を振り返ります。
 専門分野を学び始めたばかりという小軽米さんは、社会福祉士を目指して入学。国際交流に関わったり、大学広報を行うキャンパスアテンダントにも参加するなど、積極的に活動を広げ、大学生活を楽しんでいます。
 開学から25年という歴史の中で、一期生から26期生へと受け継がれていく大学のスピリットと学びのバトン。そこには、「地域の大学」として学生や教職員が積み重ねてきた教育・研究の地層があり、先頭に立って未来を切り拓く精神が確かな形となって息づいています。
 未来に向かって、さらに歩みを進めていく大学について、岩渕先生は期待を込めて、最後にこう締めくくりました。「これまで震災をはじめ、いろいろなことがありましたが、まだまだ通過点に過ぎません。25周年は、大学としての新たな歴史を創るスタート地点だと思います」。

表紙に登場してくれた岩渕由美先生と、小軽米風花さん