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岩鷲山を望みながら

平成26年8月12日

「おめでとう! “さんさ” 五年連続最優秀賞」

 本学の夏休みは学年暦では8月8日から始まります。もちろん授業がないというだけで、13日から始まる旧盆の三日間だけが全学の一斉休業日です。日頃忙しい教員にとっては、講義のない夏休み期間中こそ、むしろ研究のかき入れ時かもしれません。
 そのような夏休みを待ちかねたように、学生達の動きも活発になっており、嬉しい便りが早くも次々と飛び込んできています。

 その一つは、今年も本学のさんさ踊りチームが8月2日の参加チームの中で最優秀賞を受賞しました。五年連続です。今年は太鼓78張、笛28本を含む総勢210名が一体となって、笑顔で、中央通りの約1kmを踊りきりました。

 これを見た私の知り合いは、「若々しくて、まとまっていて、力強さに涙が出るほど感激した」と云ってくれました。声を揃えての「サッコラ(幸呼来)チョイワヤッセ」のかけ声は、正に県立大学に幸を呼び込み、益々の発展を誓い合っているかのようでした。

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 上の写真は、盛岡城跡公園の広場で出陣前最後の総練習をしているところです。初めてスマホで撮りましたので、私としては雰囲気が思うように伝えられない感がありますが、リハーサルとは云え、太鼓の迫力や 手踊りの美しさには、胸躍る中々のものがありました。

 さらに下の写真は、全員が集まっての出陣式の模様です。今年、私は県大グランドでの練習を見に行く機会がありませんでしたが、天候にも恵まれて順調に仕上がった模様で、例年になく幾度も気勢を上げる出陣式での掛け声にその自信のほどが十分感じられました。

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 一方、夏休みに入り、社会福祉学部が韓国、ソフトウェア学部がオーストリア、総合政策学部が韓国とタイ、盛岡短期大学部が韓国と米国、というように、例年のように次々と学生達が海外研修に出かけます。

 なかでも私が期待しているのは、教養科目のカリキュラム改訂で今年度から始まった、高等教育推進センター教員が担当する新しい授業「プロジェクトF(アメリカン・スタディーズ)」です。
 15回にわたる座学が終わり、9月上旬にいよいよボストン近郊への1週間の研修に出かけます。ホームステイのほか、マサチューセッツ州メドフォードにあるタフツ大学で日本語を学んでいる学生たちに震災のことや本学のことについてプレゼンテーションをして交流するなど、英語研修が主ではありますが、アメリカ合衆国発祥の地でもある東部への本学からの研修は初めてであり、西部とは違う歴史的な街並みや風情、人々の生活をしっかりと見て感じてきて欲しいと思っています。

 先日、参加学生と懇談する機会がありました。
 今回が初めてと云うことで、参加学生も1年生2名を含むまだ6名だけですが、みんな意欲に燃えており、多くのものを吸収して、これからの成長に活かしてくれることを期待しています。
 このプログラムには旅費のかかることに若干課題はありますが、これから求められるグローバル人材の育成の上で有効な投資でもありますので、学内外の継続的な支援も考える必要があると思っています。今後も多くの学生が参加し、本学の教養教育・語学教育の目玉の一つになることを期待しています。

 さらに、学生達の自主的自発的活動から始まった国際交流もありました。先日8月5日に盛岡駅西口の「いわて県民情報交流センター(アイーナ)」で行われた『熱中日中!チャイナに夢中♥わくわくどきどき中国フェスタ』です。

 これは昨年、国際交流基金日中交流センターの「中国ふれあいの場 大学生交流事業」に本学の学生がお祭りイベント「じぇじぇっといわて」を企画提案し、採択されて訪中し、重慶師範大学の学生と交流したのがきっかけとなり実現しました。帰国後、私のところへも報告に来てくれましたが、訪中した当初は厳しい両国の関係や言葉の問題で不安もあったものの、現地の学生と意気投合し、国際交流基金のご支援を頂いて、今回の中国フェスタの開催に漕ぎ着けたようです。

 8月1日から1週間の滞在の中には、遠野市や大船渡市への観光、盛岡さんさ踊りへの参加など様々な交流行事もありましたが、メインイベントは「中国フェスタ」でした。重慶師範大学と岩手県立大学の学生が知恵を絞って色々なコーナーが企画され、大変好評だったようです。

 この様に国際交流活動にも、学生達が自主的積極的に企画し行動するようになったことをたいへん嬉しく思っております。

 今年も10月11日、12日に兵庫県立大学で公立大学学長会議が開かれます。それと併行して「全国公立大学学生大会~LINK topos~」も開催されます。各大学における学生達の様々な地域活動の報告やワークショップが行われ、学長達を交えたシンポジウムも計画されています。

 東日本大震災後に、本学の「いわてGINGA NETプロジェクト」など、被災地支援、復興支援を行う多くの学生団体が誕生し、それらに参加した公立大学の学生が主体的に繋がって学生ネットワークが結成されました。その活動を公立大学協会が支援し、活動報告会を一昨年の静岡県立大学の学長会議で「学長・学生シンポジウム」として開催したのが始まりです。
 昨年は本学で行われ、今年で3回目です。

 本学からは、今年から始まった地域創造学習プログラム(7月8日付け岩鷲山を望みながらを参照)における活動や「いわてGINGA NETプロジェクト」などの被災地支援活動など、学生達の様々な自主的主体的活動が報告されるものと期待しています。
「いわてGINGA NETプロジェクト」による夏銀河2014は、今年も岩手県気仙郡住田町上有住五葉地区公民館をお借りし、ここをベースに釜石市、大槌町、大船渡市、陸前高田市などで8月13日から行われます。 

 

平成26年7月4日

「地域創造学習プログラム始まる」

 「いわてを知り、いわてを学び、いわてを創る」をキャッチフレーズとする岩手県立大学「地域創造学習プログラム」がいよいよ始動し、6月28日、29日の両日、第一弾として31名の学生が宮古地区に出かけました。
これは文部科学省のCOC(Center of Community:地(知)の拠点)整備事業の話が出た頃から抱いていた、「本学に入学した学生にもっと岩手を知って貰いたい」という望みを形にして貰ったものです。平成25年度のCOC拠点整備事業には、準備不足と云うこともあって採択されませんでしたが、本学独自の方式で自主的に行うことにしました。

 本学は県民の期待をこめて設立された大学ということもあり、もともと地域貢献を積極的に推進してきました。しかしこれは研究成果の地域への還元であり、その一環として学生がフィールドワークとして地域に入ることはあっても、教育の視点から、しかも全学的な取り組みとして、地域との交流を積極的に図ったことはありませんでした。そのことが文部科学省のCOC拠点事業に乗り遅れた理由でもあり、全学的な合意を得るのに時間を要したところでもありました。

 このたび、これまでの本学の地域貢献活動を改めて整理し、地域社会の知の拠点となるべく、本学の教育研究活動を一層発展させるための岩手県立大学「地域創造プラン」を策定しました。その中で、地域を拠点とする各学部の教育研究活動に繋げる前段階として、初年次学生を対象とした「地域創造学習プロジェクト」を実施することになりました。
 初年次生が学部をこえて参加し、県内各地の現状と課題に直に触れ、解決方向を模索することで、主体的能動的な学びのきっかけをつくることが目的です。

 今年度は手始めに数コースを設定し、各コース30名程度の学生を、事前学習を経て県内各地に2日間の日程で派遣し、地域の視察、地元住民の講話、体験学習などを通じて課題を発見させ、解決策を考えさせようとするものです。これには、これまで東日本大震災後の被災者支援や震災復興支援活動、地域活動などを積極的に行ってきた卒業生や上級生が企画から実施までリーダーとして参加し、教員はアドバイザーとしてサポートすることになっています。

朝、宮古へ向かうバス車中

(写真1:朝、宮古へ向かうバス車中(中村学長撮影))

 写真は、現地へ向かうバス車内の様子です。カメラを向けられて、いくぶん遠足気分的な様子も見えますが、学部混成で互いに知り合ったばかりの仲間とこれからの始まる未知への遭遇(?)に、期待感と緊張感も見られました。

 当日は、滝沢キャンパスを8時に出発して、2時間半強で宮古キャンパスへ、そこで宮古短大部生と合流してオリエンテーションを行い、午後、三陸鉄道で田老へ向かいました。
田老では真っ先に防潮堤へ向かい、防災ガイドさんから、大津波の被害の状況と少しずつ進みつつある復興の様子の説明を受けました。その後、班に分かれて、被災前は商店街で今は何もない街を歩き、高台への避難路にも上ってみました。写真は、被災前の写真を見ながら昔の商店街を歩いているところです。

田老町まちあるき

(写真2:田老町まちあるき(中村学長撮影))

 その後、その日の宿舎に移動し、被災後も田老に住んで活躍しておられる現地の方々から、被災の様子だけでなく、それぞれの体験に基づく防災や復興、若者への期待などについて話を伺いました。下の写真に見るような、このときの現地に方々の熱のこもった話しぶりとそれを聞く各テーブルでの学生達の食い入るような目が印象的でした。

田老町の方々との交流

(写真3:田老町の方々との交流(中村学長撮影))

 その後、震災当時田老の診療所におられて被災者の医療にご苦労された東北大学病院の黒田先生に、急なお願いにも拘わらず飛び入りで講話をして頂き、当時のご苦労や先生の様々なご経歴を通じての体験談に学生達は大いに感銘を受けました。

 翌日、日曜日の早朝にも関わらず、山本宮古市長が浄土ヶ浜レストハウスで私たちを出迎えて下さいました。

宮古市長の講話

(写真4:宮古市長の講話(中村学長撮影))

 写真は、教育と産業の振興で被災後の宮古市を再興しようとする復興計画を熱く語っておられる市長と熱心にそれに耳を傾けている学生達です。市長の情熱はその直後のワークショップと宮古短大部に戻ってからの今回のプログラムの振り返りからも、学生達の心に強く伝わったことが窺われました。

 写真は、宮古市長の講話後に、これまでのプログラムを通じて感じたことをグループ内で共有し、自分たちができると思われるアクションプランを話し合うワークショップの様子です。

市長講話後のワークショップ

(写真5:市長講話後のワークショップ(中村学長撮影))

 レストハウス二階奥のガラス越しに見える白っぽい巨岩は三陸の誇る浄土ヶ浜の景観です。あいにく当日は雨天だったため、灰色に見えますが…。

 レストハウスで三陸の美味しい海の幸を堪能した後、宮古キャンパスに戻り、今回のプログラムの振り返りと、自分たちなら何ができるか、アクションプランを班ごとに話し合いました。
 各班共通の思いは、地域の方々、とくに子供達や高齢者と積極的に交流し元気にしたいということでしたが、なかには市の産業振興の行事を少しでもお手伝いしたいとか地域の子供達と地域の未来を語りたい等という意見もありました。
 今回学んで得たこのような思いを今後どのような行動に繋げるか、そして友人達や後輩にどのように伝え広げるかが、彼らが今後本学で学ぶ上での一つのテーマであり、このプログラムを始めた私たちの責任でもあると思っています。
 今年は、この後、来週末の7月12日~13日に釜石、大槌の2コースが、秋には内陸部の西和賀コース、および盛岡・滝沢コースでの実施が予定されています。乞うご期待です。

 

平成26年5月8日

「滝沢キャンパスに春到来」

学長に就任して6年目、ことしは年度末から年度初めにかけ、何故か例年になく慌ただしい日々を過ごしました。滝沢、宮古両キャンパスでのそれぞれの卒業式と入学式のほか、公的にも私的にも様々なことが重なりました。身内の死に二度も立ち会ったのも辛いことでした。

新学期が順調にスタートし、ゴールデンウィークを迎えてようやく一息ついたとき、滝沢キャンパスはまさに春爛漫でした。ソメイヨシノは葉桜になりましたが、しだれ桜、八重桜は今が盛り、私が名の知らぬ様々な花も学内のそちらこちらに次々と咲き始めています。

「岩鷲山を望みながら」を書き始めて2年、最近は筆が鈍り勝ちであることを指摘され、気にしていました。久しぶりの今回は、開学17年目を迎えた本学滝沢キャンパスの春、とくに年々素晴らしくなるキャンパス内の桜の見所を自慢したいと思います。

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(写真1:バス停県大前入り口から正門までの桜のトンネル(中村学長撮影))

写真1は、校門前の通学路にかかる桜のトンネルです。盛岡市内の今年の開花は4月20日頃でしたが、その後の肌寒い日もあって見頃はゴールデンウィーク直前まで続きました。そして、盛岡から車で30分ほど北上した滝沢キャンパスの桜は、盛岡のソメイヨシノが散る頃に咲き始めました。満開時に雨が降り、最盛期は逸しましたが、5月2日に撮影したものです。この道路の左側が本学、右側が、本年4月から市制のしかれた滝沢市が本学と共にICT関連企業の誘致と立地を目指しているイノベーションパークです。これについては後日改めて紹介します。

写真2は、例によって学長室から見える岩手山とキャンパスの西門に通じる道路際の桜並木です。そのすぐ後ろ側に若葉の萌え始めた唐松の背の高い並木が見えます。淡い緑と針葉樹の濃い緑の間にピンク色の桜並木が連なり、そのほかの木々の芽や芝生が萌え始めて、それらの屏風のような彩りが、岩手山山頂付近右側の、岩鷲山と呼ばれる所以になっている鷲の姿とともに、滝沢キャンパスの春を告げています。

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(写真2:学長室から見た西門通路際の桜並木と岩鷲山(中村学長撮影))

本学の敷地は東京ドームの7.5倍(35.9ヘクタール)ほどあります。写真2の唐松並木が敷地の境界ではありません。その奥に、400メートルトラックをもつ陸上競技場、さらに写真から外れた右側に、8面のテニスコートとサッカー練習場、弓道場が、さらにその右奥の一番北側には、両翼が100m程度の野球場があります。

写真3の左側の桜並木は、写真2の唐松並木の右端付近にあるテニスコートのさらに右奥、つまり北側の際に植えられたものです。この写真の右手が野球場で、一塁側に張られたネットが見えます。この付近から桜並木と共に望んだ岩手山を5月4日に撮影したものです。桜はすでに若葉が目立つようになりましたが、岩手山の山頂付近には、鷲の姿がくっきりと見え、農作業の始まりを告げています。

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(写真3:テニスコート際の桜並木と野球場入り口付近から見た岩鷲山(中村学長撮影)) 

この桜並木は、写真2の西門に通じる道路際の桜並木と、この辺でL字型に繋がっています。実はここから、西門に通じる道路の途中、陸上競技場入り口付近までの百メートル以上に渡って、道路両側が桜並木になっています。満開時には、ここも素晴らしい桜のトンネルになり、盛岡市内だったら間違いなく花見の宴で大賑わいになると思われますが、学生の小グループや家族連れがささやかに弁当を広げていました。

本学から石川啄木記念館(盛岡市玉山区渋民)までは北へ車で約10分の距離です。来年は、盛岡市内や滝沢市内で花見を逸した方はもちろん、連休中に桜を求めて旅する観光客にも、是非足を伸ばして立ち寄って頂き、「桜の園」の本学を愛でて頂きたいと思います。

写真奥に見える唐松並木は、写真2のそれより更に奥の、馬っこパークと本学との境界にあります。木の間に厩舎の緑の屋根が見えますが、今後、この敷地内に本学のゲストハウスが造られる予定です。

 

平成25年12月27日

「今年もお世話になりました」

今年は平年より一日早く年末年始の休暇に入ります。岩鷲山はすでに白い衣をまとって新年に備えています。滝沢キャンパス周辺は今のところさほど積雪もなく、寒さだけが例年の岩手の冬の到来を感じさせています。

今年も本学の学生諸君は様々な形で活躍をしてくれました。私が知らない面をたくさん教えてくれたのは、10月3日から12月26日までの13回にわたり、毎週木曜日の21時からエフエム岩手で放送されたラジオ番組「てこの原理」でした。本学の女子学生8名が番組のアシスタントMC(Master of ceremony)になって、本学を紹介してくれています。ほとんどをYouTube ( http://www.youtube.com/Iwateprefuniversity )で聞きましたが、最終回はしっかりと本放送で聞かせて貰いました。ご興味のある方は、是非、上記の本学公式チャンネルで聞いてみて下さい。
初回は本学学生のトークにやや堅さが見えたものの回を追うごとに滑らかになり、中にはプロ級のトークをするゲストの男子学生もいて、ビックリでした。もっとも高校在学中は放送部だったり、演劇部で活動していたりという経験者もいるということで納得でした。学内でもっと活躍の場を造ってあげたい、とも感じました。本学の内容や学生達の活動を13回にわたって上手に紹介する様に企画して頂き、また学生たちのタレント性をうまく引き出して頂いたエフエム岩手および本学の関係者の皆さんに感謝感謝です。

昨日まで県教育委員会主催による平成25年度高大連携ウインターセッションが開催されました。県下の高校生が県内の5大学で大学生活を体験します。本学にも260名の高校生が4学部1センター2短大部に分かれ、それぞれの授業を体験しました。いわば未来の県大生達です。
最終日には、各学部で学んだこととその感想発表会がありました(写真1)。わずか一日半の体験でよくこれまでまとめられたと思うほどの素晴らしいプレゼンテーションをしてくれました。指導して下さった教員および学生の皆さん、さらにお世話頂いた学生支援室の職員の皆さんに、これも感謝感謝です。
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(写真1:ウインターセッション 感想発表会(中村学長撮影))

今年、何と云っても印象が深いのは、盛岡さんさ踊りでの4年連続最優秀賞でした。様々な制約があって200名強しか参加できないのが残念ですが、教職員も含め全学で取り組む本学最大のイベントです。すでにそのような評判になっている様ですが、盛岡さんさ踊りの名物チームとなるように,本学のまだ数少ない伝統の一つとして今後もがんばってほしいと思います。さんさ踊り実行委員会のこれまでの努力に感謝するとともに、来年の奮闘にも大いに期待しています。

先日、久しぶりに滝沢キャンパスの隣接地にある川前地区の皆さんと鍋を囲んで交流する土鍋ネットに参加してきました(写真2)。これは本学の学生ボランティアセンターが、地域活動の一環として地域住民との親交を深めるために数年前から行っているものです。
この地区は、学生達が通学に使っている岩手銀河鉄道IGRの滝沢駅と本学滝沢キャンパスとの中間にあります。ご高齢の方が多い地域で、ボランティアセンターでは自転車でのパトロ-ルとか、積雪時の雪かきなどの様々な活動をこの地区で行ってきました。この日頃の活動が、東日本大震災後にいち早く行動を起こし、被災地支援に当たる全国の学生ボランティア活動を支えた「いわてGINGA-NETプロジェクト」の原点になっています。
このGINGA-NETに参加した学生達の活動とそれを通じての成長が、学生を地域活動に参加させる教育的意義として公立大学協会で認知されて、学長会議で学生も参加するシンポジウムを開催するまでに至りました。本年10月に本学で開催された本年度第1回目の学長会議では、「大学/学生と地域コミュニティの協働をデザインする」をテーマとする特別シンポジウムが開催されました。地域を支える公立大学における学生の役割について学生達から積極的な発言があり、学長達に頼もしさを感じさせてくれました。
本学の学生達の活動から始まったことが公立大学協会を動かし、今後の公立大学の教育に一石を投じたことは誠に喜ばしいことです。この様な学生達を育ててくれた本学の教員、支えてくれた職員の皆さんに感謝感謝です。
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(写真2:土鍋ネット(中村学長撮影))

来年から、本学のキャンパスがある「滝沢村」は「滝沢市」になります。岩手銀河鉄道IGRの「滝沢駅」の愛称も「学園の杜」に決まり、来年のダイヤ改正時から社内アナウンスが「滝沢・学園の杜」に替わるそうです。
本学の地域連携本部に隣接する「滝沢村・IPUイノベーションパーク」には第2イノベーションセンターの建設がすでに始まっています。これに入居する企業も着々と決まっており、来春から始動と聞いています。
本学の正門前が「滝沢テクノハイランド」とも云うべきIT企業集積地域を形成し、周辺の学園都市地域と合体して、学生達とともに多くの企業人も行き交う滝沢市の中心市街地の一つになって賑わいを見せ、年末には名物の県大イルミネーション(写真3)が一段と光り輝くことを初夢で見ながら、午年を迎えたいと思います。皆様も良いお年を…。

今年開学16年目を迎えた岩手県立大学ですが、多くの方々のご支援で順調に育っていることを心から御礼申し上げます。
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(写真3:県大モールのイルミネーション(中村学長撮影))

 

平成25年10月24日

「平成25年度全国公立大学学長会議及び全国公立大学学生大会」

10月12日(土)、13日(日)の両日、本学において全国公立大学学長会議が開催され、全国83公立大学のうち74大学の学長と関係者、文部科学省高等教育局大学振興課および公立大学協会事務局など、併せて総勢100名ほどが参加しました。また同時に、34公立大学から81名の学生が参加し、全国公立大学学生大会も開かれました。

公立大学の全学長と学生が一堂に会することは、昨年11月に静岡県立大学で開催された学長会議に端を発しています。学長会議と並行して学生達は「被災地支援と地域防災」に関するワークショップを開きましたが、その後、学長会議に加わり、特別シンポジウム「被災地支援と地域防災に果たす大学と学生の役割」を開催しました。学生達の体験に基づく発表や発言には大いに感銘を受けましたが、この中で本学の学生諸君も大活躍し、シンポジウムは大変盛り上がりました。
きっかけは「いわてGINGA-NETプロジェクト」でした。東日本大震災後の被災地支援に取り組んだ学生達に強い連帯感や友情が生まれ、公立大学協会(公大協)主催の活動報告会などを通じて彼らの活躍が大いに評価されました。そのことが、各大学の枠を越えて学生達の被災地支援や地域活動を公大協としても支援し、大学教育改革へ学生が参画することを議論する合同シンポジウムへと繋がったわけです。

学長会議では、午前中の全体会議で公大協の木苗会長(静岡県立大学学長)から「公大協を取り巻く諸課題」について、また文科省高等教育局大学振興課の里見課長から「公立大学を巡る文教施策」について、それぞれ報告がありました。午後は、公立大学の課題である「公立大学の存在意義と地域の学びのデザイン」、「学修成果の把握と内部質保証」、「大学COCを実現する大学ガバナンス」について、三つの拡大委員会に分かれ活発な意見交換が行われました。
昼食時間帯には、被災地支援や防災、ボランティア、地域活動などについて各参加大学の活動状況がポスターで披露され、学長たちに熱心に説明し議論する学生達の姿がポスター会場の随所で見られました。

午後の後半に学生達も加わって特別シンポジウム「大学/学生と地域コミュニティの協働をデザインする」が開かれました。学生達によるワークショップの成果発表後、パネルディスカッションに入り、はじめに文部科学省のCOC (Center Of Community:地(知)の拠点) 事業に採択された三大学からその内容が紹介されました。質疑では、とくに学生側からCOC事業における学生の役割などについての積極的な質問があり、地域活動に参加し大学を盛り立てたいという強い意思表明があるなど、頼もしさを感じさせてくれる場面もありました。
その雰囲気は、会議終了後に食堂で行われた意見交換会(懇親会)にも持ち込まれ、学長と学生達とが懇談する公立大学ならではの情景がそちらこちらで見られました。

翌13日には、バス二台に分乗して盛岡を出発し、田老から釜石までの沿岸被災地を視察しました。宮古の山本市長には、わざわざ田老でお待ち頂いて宮古市内までご同行頂くと共に、被災の状況や復興の現状などを、昼食をはさんでお話し頂きました。写真は田老の防潮堤の上で現地のガイドさんから被災の状況を聴いているところです。
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また田老観光ホテルの6階では、ホテルの社長さん自らが撮影された津波被災当時の門外不出のビデオを見せて頂き、一同、当時の凄まじい情景を改めて思い起こしながら胸詰まる思いでお話を伺って、防災への思いを新たにしました。
午後は、宮古から山田、大槌、釜石と巡りましたが、一部の方を除いてはほとんどが初めて被災地に入ったということで、テレビ等で受けていた印象とは違う現地の凄まじさと復興の遅れに次第に無口になり、改めて感じるものがあったようにも見受けられました。

今回の学長会議では、学生が地域活動に取り組む力強さとそれに関わった学生の成長振りを改めて感じさせられました。文科省のCOC事業に採択された各大学の真剣な取り組みは、正にそのことを意識したものであり、カリキュラムへの組み込みと単位化について全学が一丸となって計画を進めていることに、各大学の地(知)の拠点(COC)としての自覚と人材育成に対する熱意を強く感じさせられました。
本学でもその趣旨を活かして、来年度に向けて全学的に取組んでいきたいと考えています。 

平成25年8月23日

「残暑お見舞い申し上げます」

今日の岩鷲山は雲間に見えたり隠れたり、北陸はいま豪雨だそうです。キャンディーズの歌のタイトル風で書き出しましたが、立秋を過ぎても日本列島では猛暑とこれまで経験の無い集中豪雨、一方では異常渇水の報道が連日続いています。盛岡でも立秋以降の16日間に真夏日が13日もありました。
昨年は立秋から秋分の日までの48日間に真夏日が33日、その中に猛暑日が3日あり、八階建ての最上階にある我が家は、日中熱せられたコンクリートによる天井からの輻射熱で一晩中苦しめられたことを思い出します。本学が開学した1998年の同時期に真夏日は3日、10年前の2003年には僅か1日、盛岡ではお盆が過ぎると涼しくなるのが普通でしたが...。
昨今のこの世界的な異常気象は、環境を顧みない人間社会に対する自然界の怒りにも思えます。罪のない人たちが被害を受け犠牲になることには、天の配剤の理不尽さも感じますが...。
この異常気象がいつまで続くかは「天のみぞ知る」ことですが、暦の上では夏は着実に終わりに近づいています。

夏といえば高校野球です。今年は花巻東高校の活躍に一喜一憂しました。「今年のチームにはスーパースターはいない」と佐々木監督は言っておられましたが、ベスト4まで勝ち上がったチーム力には心から「感動をありがとう」と申し上げます。
牛若丸を思わせる小兵千葉翔太君の活躍には、私も目を奪われました。準決勝にまでも臨んで、直前での警告で活躍を封じられたことに、個人的には同情を禁じ得ないものがあります。不利な体格を補う術を編み出しての活躍は素晴らしいと思うし、日米通算4000本安打を達成したイチロー選手の努力を見習って、出来ればプロの世界で、自分の得意技で大男を手玉に取るような活躍をしてほしいと思います。
彼らの戦い振りを見ていると、先輩にプロで大活躍している菊池雄星選手や大谷翔平選手がいるという自信がパワーを与えている様に感じました。以前は非力と思われていた県内出身の選手をあそこまで育て上げた佐々木監督をはじめ周囲の方々の指導力には、畑が違うとはいえ、見習うところが大です。岩手県の子供達にも大きな潜在能力があり、それを磨き光らせるのは私達大人の責任だと、つくづく感じさせられました。

今夏、もう一つ嬉しかったのは、「盛岡さんさ踊り」での本学さんさチームの4年連続最優秀賞受賞でした。
8月3日の本番には、大学名を記した横断幕と大きな提灯をもった野球部員を先導に200名ほどが、翌日の昨年度受賞団体のパレードにも200名近くが参加して、笑顔溢れ、力強く、統率のとれた、定評ある「県大さんさ」を披露してくれました。浴衣を一新し、太鼓も補充しての参加でしたが、それでも年々浴衣の数が間に合わなくなるほど希望者が増え、4日のパレードでは新旧の浴衣が入り交じっての参加でした。
リーダー達の熱意溢れる指導とそれに応える学生諸君の熱心さ、毎年の様に参加し楽しみながら学生達を支えている教職員の姿には、練習を見ているときから目頭が熱くなるものを感じました。これが本学の全ての活動の原点では...、との感を改めて強くした今年の夏でした。

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↑「県大さんさ」を先導する野球部諸君(中村学長撮影)

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↑ 「県大さんさ」を太鼓で力強く盛り上げる男子学生(中村学長撮影) 

平成24年12月28日

来年もさらに一層の輝きを!!

先頃、エフエム岩手の小田加代子さんから、「この頃の県大生はイキイキしている様に見えますね」と言って頂きました。ボランティア活動や盛岡さんさ踊りでの三年連続最優秀賞などマスメディアに取り上げられる機会も多くなり、その様な印象を持たれたのだと思います。私にとっては、何よりも嬉しいほめ言葉でした。

やや旧聞に属しますが、本学の学生が主体になって活動している「青少年非行防止ボランティアサークルASSIST」が、先月11月29日に国立オリンピック記念青少年総合センターで、今年度の「社会貢献青少年」内閣府特命担当大臣表彰を受賞しました。下の写真は、代表の永洞みどりさんと副代表の黒丸直央君が、その報告に学長室へ来てくれたときのものです。
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このサークルが繁華街の落書き消しなどで環境美化活動をしていることは新聞等で知っておりました。盛岡西警察署のご指導を頂きながら、放課後の見回りや児童センターでの非行防止教室の開催など、非行防止のために姉や兄の立場で少年少女を見守る様々な活動を7年も行っていたことも改めて知り、その熱意と行動力には頭の下がる思いでした。

その喜びが冷めやらぬ午後、もう一つ嬉しい報告がありました。本学の「いわてGINGA-NETプロジェクト」が、学校や地域の優れた防災教育や活動を顕彰する「ぼうさい甲子園」で、今年度の大賞を受けることが決まったということでした。「ぼうさい甲子園」は阪神・淡路大震災を契機にもうけられたもので、兵庫県と毎日新聞社、(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構が共催し、今年度で8回目になるそうです。

「いわてGINGA-NETプロジェクト」が、震災後にボランティア活動を望む全国の学生を夏休みなどに多数受け入れて、被災地支援や地域コミュニティーの再生、学習支援などに努めていることが高く評価され、年明け早々に兵庫県で表彰式があるとのことでした。本学のボランティアセンターの活動は全国的にも高く評価されていますが、今回の受賞はその一つの証左であり、心から「おめでとう」と言いたいと思います。

先日25、26の両日、今年も県教育委員会主催の高大連携「ウィンター・セッション」が開かれ、本学でも330名の県内高校生を受け入れました。看護、社会福祉、ソフトウェア情報、総合政策の4学部と共通教育センター、および盛岡、宮古両短大部の7グループに分かれ、それぞれにおける授業や実習などを体験して貰いました。その様子を私も見せて貰いましたが、熱心に受講している生徒達の様子はもちろん、彼らの兄や姉の立場になって一生懸命に授業担当教員の手伝いをしている学生諸君の姿にも、改めて感動すら覚えました。

本学では、学生達にキャンパス・アテンダントを務めてもらい、本学を訪れた高校生や保護者、先生方の案内役や説明役をお願いして好評を得ています。今回のウィンター・セッションでは、いくつかの学部で学生達に教員のアシスタント役を務めて貰っていましたが、臆せずに生徒達の面倒を一生懸命見ている姿は頼もしい限りでした。内容の軽重はあるにしても、学生を信頼し、助手役として上手に活躍させている本学の先生方の指導力にも脱帽です。教員と学生とのこのような二人三脚が、これからの本学の教育効果を益々高める大きな原動力になる予感すら感じました。できれば全ての学生に、その様な体験形学修をさせたいものです。

あと数日で新年を迎えます。来る新たな年でも、本学の学生諸君が教室での学びはもちろん、様々な分野で今年以上に益々元気よく活躍し、きらきらと輝く姿を県民の皆さんにたくさん見せて貰いたいと思います。「一事が万事」で、そうあることが少なくても今の岩手県立大学において、県民のご期待にお応えする最短の近道であるように思います。大学改革実行プランにおける様々な課題に対する本学独自の解法の一つになるようにも感じます。

昨日までの厳しい冷え込みがやや緩み、今日は久々に岩鷲山も機嫌の良い姿を見せてくれています。開学16年目を迎える平成25年、岩手県立大学がさらに飛躍の年を迎え、学生諸君が一層輝くことを、岩鷲山も願っているようです。

それでは皆さん、来年もよろしくお願い致します。

 

平成24年12月6日

「中国に行ってきました

先日11月19日~22日まで、10数年ぶりに中国に行ってきました。大連、北京、石家荘の3泊4日の旅でした。

大連は、ソフトウェア情報学部へ毎年聴講生と同研究科へ留学生を送って頂いている大連交通大学への表敬訪問、北京は、マスメディアに多くの人材を輩出している中国伝媒大学へ語学研修等の交流可能性を探るための視察でした。また石家荘は、開学以来交流がある河北省社会科学院に、協定を結んで10周年と社会科学院創設30周年目にあたる昨秋、そして今年6月にも来学頂いたことへの御礼と私自身の表敬訪問が主な目的でした。

下の写真は、大連空港での一行の写真です。左端は大連交通大学ソフトウェア学院副院長の梁旭教授、右端は通訳でお世話になった徐艶華副教授です。

大連空港にて.jpg

例の騒動があった後でしたので、当初は、予定通り訪中できるか、訪中の際に何か起きないか、と周囲の方々にも大分ご心配を頂きました。しかし「案ずるより産むが易し」で、先方からは予定通りのスケジュールでお招きを頂いただけでなく、いずれの訪問先でも、いわゆる熱烈歓迎を受けました。

酒宴の席ではありましたが、「難しい政治的な問題は別にして、両国民が親しく頻繁に交流し、理解し合うことが、過去にあった様な問題を起こすことなく、良好な関係を将来も持続発展させるために大事である」というのが、双方の一致した思いであることが確かめられ、嬉しく感じました。

私にとっては10数年ぶりの中国訪問でしたが、予想以上の飛躍発展にはビックリしました。日程がタイトで、街を歩く時間がありませんでしたので、発展の様子を具体的にはお伝えできませんが、下の写真を見て下さい。大連のダウンタウン(多分?)にあるホテルの前から早朝のホテル周辺を写したものです。新築間もない高層ビルの林立し、高級車の並んでいる様子がわかると思います。
この様な景色はここだけではありません。飛行機から大連市街を見ても市内一帯に高層のオフィスビルや集合住宅が林立していますし、市内では高層ビルや高速道路、地下鉄などの工事があちこちで進められています。

大連ホテル前.jpg 

北京では、オリンピックがあったこともあって、30年ほど前に訪中したときとは比べられないほど、全く別な近代的な都会に替わっていました。北京首都国際空港から市内に入る高速道路の車窓の風景は、大地の広さもあって、アメリカ、例えばワシントンDC郊外のダレス国際空港から市街地に入るときの様子、と勘違いするほどでした。勿論、目を凝らして見ますと、以前訪中した際、そちらこちらで見られた古い建物などに生活している人々の様子も少しは残っていましたが、それはアメリカでも、日本でも同じこと...。
市街地も、想像を絶する交通渋滞や広い横断歩道を信号無視で渡る人々の行動は別として、整備された広い道路や立派な建造物とビル群など、東京以上に発展した都会の姿に変貌していました。何よりもきれいに清掃されている市街地にはびっくりしました。正に発展の勢い著しい中国と現在の日本との違いを見せつけられた思いがしました。

このような中国の発展に日本がかなり貢献したことを、良識ある方々は十分承知していました。しかし、ホテルのケーブルテレビで抗日戦争を描いたドラマが何チャンネルも流されている現実には、国情の違いがあるとは云え、一度壊された友好関係を取り戻すことの難しさを改めて感じさせられました。

私に比べれば将来が無尽蔵にある学生諸君には、是非、発展する中国の状況を自分の目で確かめ、人々と交わって、改めて外から日本を見つめ直し、日本の良さや問題点を知ると共に、自分たちのこれから、日本のあり方を考えて欲しいと、つくづく感じました。できれば、アメリカやヨーロッパ諸国とも見比べて欲しい。視野をもっともっと広げることは、将来どこで活躍しようとも、諸君の人生と将来の日本にとってプラスになることは間違いありません。

私は、その様なチャンスが、本学の学生諸君にできるだけたくさん与えられる様に努力し、実現できるよう応援したいと思っています。

(記事中の写真はいずれも中村学長撮影) 

平成24年12月4日

復興ガールズ1期生に幸あれ !!

先日、私の手元に一冊の報告書が届きました。「復興girls*活動報告書」です。 

東日本大震災津波の甚大な被害状況を知った総合政策学部2年(当時)の野中里菜さんが、何か支援をしたいという思いから友人の阿部夏美さんを誘ったのが始まりだったそうです。その後、千葉彩加さん、山火利紗さん、米沢あゆみさん、佐々木遥さん、釜石紗津季さん、関口悠さんの6名が加わり、被災地の仕事の復興を手助けしたいと活動を開始しました。 

その頃本学では、平成22年度からスタートした文部科学省の「就業力育成支援事業」に採択され、様々なプログラムを走らせ始めていました。その中に学生のやる気を支援して就業力向上を目指す「IPU- Eプロジェクト」がありました。彼女たちは23年度のこの事業に応募し、採択されて、大学公認の活動になりました。私もその申請書類に目を通した筈でしたが、恥ずかしながら、そのときの印象は薄いものでした。

  「IPU- Eプロジェクト」に採択後、学長室に挨拶に来てくれました。「銀座にある岩手県のアンテナショップ銀河プラザで、沿岸被災企業の商品や自分たちでデザインした商品の販売と被災地の被害状況を報告する計画がある」と話してくれました。そのとき、「メディアで宣伝したいので、テレビ局や新聞社を紹介して欲しい」とも相談されました。私はちょっと考えましたが、「自分たちで考えたプロジェクトなのだから、自分達で直接、企画書をもってテレビ局や新聞社の受付に行って、熱意をもってお願いしたら...」と、敢えて冷たく突き放した様に覚えています。

大人の世界なら「事前にアポを取って...」と云うところでしょうが、学生達がどういう行動をとり、失礼ながら、先方がそれにどう対応して頂けるのか、を見たかったこともあります。それも彼女たちの勉強だと思ったからです。ご迷惑をおかけし、失礼もあったかもしれません。しかし結果的には銀河プラザに多くのお客さんに来て頂きました。そのことが、その後の彼女たちの活躍の場を拡げ、彼女たちのやる気をさらに引き出すことになったと思っています。学業が疎かにならないかと心配になったほどでした。

彼女たちの活動報告書を見ますと、活動を始めて1年半で30回以上もイベントや交流会を催したり、参加したりした様です。メディアにも再三再四取り上げられ、さらに経済産業省主催の社会人基礎力育成グランプリ2012で準大賞を受賞するなど、岩手県立大学の名を大いに高めてくれました。

そんな復興girls*の1期生(勝手に私が名付けました)の引退式が11月27日に行われました。引退と聞いてびっくりしましたが、12月に入ると3年生は就職活動に入りますので、なるほどと納得です。

引退式には復興girls&boys* の2期生も出席していました。すでに昨年の秋頃から、現在の2年生、しかも男子学生も加わって活動していることは知っていました。今年になってさらに1年生も加わり、しかも学部を越えて後継者が集まっています。すでに就業力育成支援事業であるIPU-Eプロジェクトの枠を越えた活動になっていました。もっとも就業力育成支援事業は昨年の仕分けで取り止めになりましたので、今は学生達の自主的な被災地支援活動になっています。本学としては活動が続く限り応援をしていこうと思っています。

引退式で1期生たちは、口々に「講義を受けるだけの大学生活では得られないたくさんの貴重な経験ができて、充実した大学生活をおくれた」と語ってくれました。多くの人々に出会い、たくさんの人たちに支えられ、キャンパス内だけでは得られない多くのものを学んで、彼女たちは大きく成長しました。私はこのことを大変嬉しく思っています。

お世話になった皆さんに心から御礼を申し上げると共に、ご迷惑をおかけした方々には学生達の成長に免じてご容赦頂きたいと思います。

復興girls* 達の1年半の活動経験とそこで得た仲間達は彼女たちにとって大きな財産です。これからを生き抜く上で、とくに苦しいことに直面したときほど、大きな力になる筈です。今はただ、就活を無事乗り切ることと、「彼女たちの明日に幸あれ」と、心から祈りたい気持ちで一杯です。

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 (写真:11月27日の引退式の様子(学生支援グループ撮影))

平成24年9月6日

「硬式野球部、頑張っています」

先日、本学野球部監督の中村淳一さんから連絡を頂いて、岩手町野球場での本学硬式野球部の試合を応援に行きました。中村監督は本学の第一期生で、在学中も硬式野球部に所属し、卒業後、硬式野球部の監督を務めておられます。今春県庁から本学学生支援室に主査として転任して来られました。

前回の「岩鷲山を望みながら」にも書きましたが、硬式野球部の諸君には、毎年の盛岡さんさ踊りで、横断幕と大きな提灯をもって本学チームの先頭を歩いてもらっています。そんなこともあって、硬式野球部の活躍には関心を持っていましたが、これまでは観戦の機会がありませんでした。

北東北大学野球2部の秋季リーグ戦は8月25日(土)から始まりました。本学は、第1週の第1試合でノースアジア大学と対戦し、私の応援もあって(?)、見事、7対0の7回コールドゲームで勝利しました。
本学の硬式野球部には高校での経験者が多く入部しているとは聞いていましたが、失礼ながら、正直言って、本学の選手諸君がどの程度のプレーをするのかは、観戦するまで不安でした。しかし素人目ではありますが、守備も、攻撃も、そんな不安を吹き飛ばす、なかなかのものでした。
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先発ピッチャーは球威もあり、ときどき力んでデッドボールもありましたが、コントロールも良く、バックもよく守っていました。バッティングもなかなかシャープで、確実に点を取っており、安心して見ていられました。7回からピッチャーが交代しましたが、彼もなかなかよい球を投げていました。確か三人凡退だった様な気がしますが、楽しんで見ている中に、気がついたら7回コールドで試合が終わっていました。
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翌日は観戦に行けませんでしたので結果が気になっていましたが、岩手日報のスポーツ欄に小さく掲載されているのを見つけました。8対0のコールド勝ちでした。9月1日、2日に行われた第2週の秋田大学戦では、若干、苦戦の雰囲気を感じましたが、2戦とも3対1、5対4(延長11回)で勝利した様です。これまでは4戦4勝、「お主ら、なかなかやるな!」の思いを強くしました。

今週末の第3週は強敵の盛岡大学、第4週は弘前大学、最終の第5週は青森公立大学と、これからも試合が続きます。中村監督の言によれば、これからが勝負所のようで、大いに頑張って欲しいと思っています。
とくに第5週の9月22日(土)、23日(日)は、大迫球場が会場です。時間と関心と愛校心のある学生諸君は、私の代わりに、是非応援に行ってあげて下さい。

(※この記事の写真はいずれも中村学長撮影)

平成24年8月7日

 「三年連続最優秀賞おめでとう」

たくさんの学生が"盛岡さんさ踊り"への参加を希望していると聞いた時、私は今年の最優秀賞を確信していました。

20120408-1.jpg 今年の本学のさんさ踊りチームは、8月2日19時40分頃、野球部の諸君がもつ「岩手県立大学」の横断幕を先頭に市役所前を出発しました。力強く若々しい太鼓の響きに優美さを加える笛の音、そして笑顔と若さ溢れる200余名の"さんさの群舞"が、本学の特徴です。今年もそれを遺憾なく発揮してくれました。実行委員会の皆さんと参加してくれた学生および教職員の皆さん、暑い中、本当にご苦労様でした。おめでとうございます。

20120408-2.jpg 右の写真は、前年受賞団体として4日の最終日に再度参加した際の本学の演舞の様子です。一観客として沿道の雑踏から撮りましたので、踊り手の早い動きにブレ気味ですが、心から楽しげに踊り、太鼓を叩き、笛を吹いている姿が写っています。本番に参加できなかった学生や教職員を含め、本番に劣らぬ人数が参加し、見事に沿道の声援に応えていました。

 

20120408-4.jpg "さんさ踊り"の由来は他に譲るとして、私が子供の頃、お盆の夜に近所の広場やお寺の庭などで輪踊りをしていたことや、10人位のグループが町々を踊って門付けをしていたのを覚えています。当時、盛岡には「舟っこ流し」以外にこれといった夏祭りもなく、東北4大祭りに先を越されていました。一時期、北上、中津、雫石の三川に因んで「水祭り」なども計画されましたが、長続きしませんでした。

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私はその頃から、由来はともあれ、太鼓を叩きながらのさんさ踊りの迫力やテンポ、踊りそのものの優美さから、これこそ徳島の阿波踊りにも匹敵する盛岡の夏祭りになると思っていました。このことを友人にも話しましたが、当時は相手にして貰えませんでした。どういう経緯があったのか、それが30年ほど前、誰でも踊れる様に振り付けを簡略化し、盛岡の夏祭りに仕立て上げられて、いまや東北五大夏祭りの一つになりました。私が学長に赴任した夏、友人からは「お前の言う通りになったな」と言われました。

このこともあって私は「盛岡さんさ踊り」には特別に思い入れがあり、夏祭りとしては少し先輩格の「山形花笠祭り」を抜いて東北四大祭りに、あるいはダイナミックさと短い夏を惜しむ勇壮さと優雅さとでは東北三大祭りと言っても良いとすら思っています。

岩手県立大学に学ぶ学生諸君にはこれからも、その様な「盛岡さんさ踊り」を心から楽しんで参加し、最優秀賞を頂ける県大スタイルを伝承して、盛岡の短い夏を盛り上げていって下さい。ときには、IPU生らしい演出やアクセントを少し加えると、沿道の皆さんにもっと楽しんで貰えるかもしれません。これも私が望んでいる「活力」と「魅力」に溢れる県大の一つの姿です。

 (※この記事の写真はいずれも中村学長撮影)

2012年7月20日

「若者の活躍の陰に良き指導者あり」

本学公式ツイッター(7月12日)にもあった様に、ラグビー部の諸君が優勝報告に来てくれました。写真はそのときのものです。

優勝トロフィーと賞状を前に、前列がソフトウェア情報学研究科博士前期課程1年の吉田優介君(右)、総合政策学部2年で部代表の美濃谷孝明君(中央)、看護学部2年でマネージャの大村梨奈さん(左)、そして後列が監督の盛岡大学文学部准教授高城靖尚先生(右)と顧問の本学総合政策学部教授吉野英岐先生(左)です。

5月20日に八幡平市で開かれた第1回東北地区大学ラグビーセブンズ大会に盛岡大学との合同チームで参加し、4戦4勝、うち3勝は相手に得点を与えないと云う、圧倒的強さでの優勝だったようです。本学から試合に参加したのは吉田君と美濃谷君の二人ですが、優勝はラグビー部全体の日頃の鍛錬の賜物であり、「優勝おめでとう」と心から讃えたいと思います。

写真で見るように、両君ともラガーマンらしい素晴らしい体格の持ち主ですが、それ以上に学業と両立させていることが素晴らしい。とくに吉田君は今春大学院に進学して文武両道を実践しており、頼もしい限りです。これからの一層の活躍も期待したいですし、それに続く学生が次々と現れ、様々な運動部からの優勝報告が学長室に届けられると嬉しいですね。

ラグビー部はこの秋、15人制の東北地区大学ラグビーリーグが控えています。確か2009年の大会でも、本学と盛大との合同チームが準優勝だったと記憶しています。今回も暴れ回ってくれそうですので、是非、みんなで応援しましょう。

この度、初めて監督の髙城先生にお会いしました。本学だけでは強いチームとして成り立ち難いところを、盛岡大学のチームに加えて頂き、2009年は15人制の東北地区1部リーグで準優勝、今年は7人制で優勝に導いて頂き、秋の15人制のリーグ戦でも優勝を狙おうとするチームに育て上げて頂きました。日頃のご指導に感謝申し上げ、その卓越した指導力と学生も慕うお人柄に心から敬意を表します。先生には宮古短期大学部の非常勤講師もお願いしております。

先日、高校以来の友人である黒澤和雄氏が率いる黒澤箏合奏団の演奏会に行きました。お弟子さん達の相変わらずの素晴らしい演奏の数々で、久し振りに心が洗われる箏の調べでした。彼が長年の努力で盛岡二高の箏曲部を全国で優勝させるほどの力量にまで育て上げたことは、地元では有名な話です。

高城先生にしろ、黒澤氏にしろ、若者の能力を引き出して相当の成果を上げるまでに育て上げるのは、指導者の熱意と愛情、積年にわたる忍耐強い指導にあることを改めて教えられた一週間でした。

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2012年7月5日

「オープンキャンパス」120702 013-sw.jpg

まずは写真をごらんください。天を衝くような岩手県立大学のシンボルツリー「ドイツトウヒ」です。そしてその下に集う高校生達。残念ながらこの1枚の中におさまりませんでしたが、左側には遠く「姫神山」が望め、また右側には前回報告したビオトープ大賞を受賞した第一調整池があります。

これは、オープンキャンパスに参加し、帰りのバスを待つ間の高校生達の1スナップです。私は、学長就任以来、このドイツトウヒの下に広がる広大な芝生の丘に学生達が集い、語らう姿を期待していました。何故かこれまで、その様なシーンを見ることはありませんでしたが、高校生達がごく自然に、それを実現してくれましたので、ついカメラに納めました。

本学のオープンキャンパスは。今年も7月の第一日曜日である1日に開催されました。今年は梅雨の中休みか、晴天で暑い日が続きましたので、「そろそろ天候が崩れるのでは...」と恐れていました。オープンキャンパス担当の教職員や学生達の総力での準備が功を奏してか、天候の崩れも無く、さほど暑くもならずに、「県大でまた会おう」という想いで帰りのチャーターバスを見送りました。オープンキャンパスに来て頂いた高校生達、保護者の皆さん、先生方には感謝、感謝です。

総力を挙げて準備から後始末まで頑張ってくれた教職員には当然感謝していますが、本学の学生のみなさん、特にも昨年からお願いしているキャンパスアテンダントの活躍には、今年も頭が下がりました。飾り付けなどの準備から、当日の受付、キャンパスガイド、保護者説明会での体験発表、各会場やコーナーでの案内等々から、最後は手を振り、声をかけてのバスの見送りまで、いわば獅子奮迅の働きをしてくれました。本当にありがとう。学生は本学の宝であることを痛感した一日でした。

2012年6月14日

「本学第一調整池にビオトープ大賞」

本学滝沢キャンパスの自然環境の素晴らしさは、本学に学び働く学生、そして教職員の誇りです。その点で、本学に勝る景観をもったキャンパスは「国内はもとより世界にもない」と私は思っています。本学を見て頂いて、これ以上のものが他にもあると思ったら是非教えて下さい。それほど素晴らしい景観です。

 そしてこの度、本学キャンパス内の第一調整池が、NPO法人ビオトープ協会から今年度のビオトープ大賞を頂くという栄誉に輝きました。ビオトープは、生物群集の生息空間を示すドイツ語(Biotop)が語源だと云うことです。これを人工的に造るには餌になる生物や繁殖地、餌になる生物が食べる植物など関連する自然生態系全体を維持する必要があります。

 本学の第一調整池は、元来は雨水と学内の排水処理施設の処理水を貯めるために造られたものです。開学当初は池の周辺に植物を計画的に植栽し、それを管理していたそうですが、開学後5年位たってから、本学総合政策学部の平塚教授のご指導で、自然に入り込んできた植物も残すことにし、ビオトープとしての管理に切り替えたそうです。その結果、今日の様な自然、半自然、人工のバランスがとれた調整池付近のすばらしい景観になりました。

池には放流された魚類やヌマエビ、タニシなどが生息し、鳥類も38種ほどが集まってくるそうです。その中には岩手では絶滅のおそれがあるものも含まれているそうで、貴重な空間を形成していることになります。ここに至るには、本学の庭を維持管理して頂いている(株)共同園芸の皆さんのご苦労があったことにも感謝申し上げたいと思います。

この第一調整池は、本学滝沢キャンパスの校門側のアクセントになっています。本学の誇りとして、これからも学生・教職員の皆さんはもちろん、近隣にお住まいの皆さんや盛岡辺りからも、できれば県外からの観光客にも、ここの四季折々の景観を楽しんで頂きたいと思います。

この際、第一調整池というのは無粋ですので、親しく呼べる愛称を付けたらどうだろうかと考えています。

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  ■第一調整池から眺めた初夏の岩鷲山と岩手県立大学(平成24年6月11日 中村学長撮影)

 

2012年5月15日

「全学体育祭を終えて」

今年の天候はいったいどういうことでしょうか。いつもだったら、初夏の日差しに映える新緑の向こうに、本学を見守るかの様に岩鷲山が姿を見せているのに、学長室から見えるカラ松並木の向こうは、今日も灰色一色です。 

先週の土曜日(12日)もそうでした。せっかくの全学体育祭も、グランドで躍動する学生達を見守るはずの岩鷲山は姿を見せず、ハッキリしない雨模様の天候に、体育館内で行うことになりました。走り回るには手狭でしたが、実行委員の諸君の工夫もあって、全種目を無事、楽しくやり遂げたことに、感謝、感謝です。グランドに比べて足下がしっかりしていたので、天候を気にせず、競技そのものを楽しめた様にも思いました。 

いつもながら、学生も教員も参加数の多い看護学部の団結力はさすがです。第1回目に次いで今年も、数少ない男子学生のがんばりもあって総合優勝をさらいました。参加数が最も多かった教職員チームが最下位だったのはご愛敬でしょうか。ソフトウェア情報学部と総合政策学部は参加者が少ないため今年も合同チームとなりましたが、男子が多いこともあり3位に滑り込みました。 

体育祭は、本学の学生が様々な分野でもっと元気に活躍してほしいという私の想いから、一部の学生に持ちかけて始めて貰いました。今年で四回目、宮古短期大学部からも参加しての開催は三回目になります。青空の下で活発に走り、動き回る学生達、それを応援する声援や笑い声、これらが本学の一年間の元気の始まりになることを念じていました。

しかしながら今年は教職員の参加数が最も多く、片道2時間もかけて参加した宮古短大部が看護学部に次いで多かったのに対し、四大の他の3学部の参加者の少なさに、様々な事情があったとはいえ残念に思いました。実行委員会の諸君が準備に走り回っている学内行事について、学生の皆さんにはもっと関心を持ってもらいたいと思います。これには教員からのこういった面での意識づけや指導などももっと必要ではないかと考えています。

岩鷲山が見えない今日のような日は、こういう様なことを考えてしまいます。

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2012年5月9日

「岩手の本当の復興」

いま学長室からは、やや霞みがちの青空の中に雪解けの進んだ岩鷲山が見えます。それを背景に、満開を過ぎた桜並木とその後ろに背の高い深みを増しつつある新緑の唐松並木が横に一列に並んで、まるで屏風絵の様です。これからの1年を期待させる本学キャンパスの最も美しい春景色の一つです。

ところで、先日久し振りに映画を見ました。水谷 豊主演の「HOME 愛しの座敷わらし」です。県内各地で撮影されたとのこと、岩手山はもちろん、盛岡のいろいろなところが映っていました。岩手の自然の豊かさがふんだんに映し込まれており、岩手を離れている方々には懐かしさを覚えることと思います。

物語は、食品会社に勤める主人公の開発の仕事がうまくいかず、盛岡支社に左遷されたところから始まります。都会生活しか知らない家族が岩手に引っ越してきて広い曲がり屋に住み、慣れない田舎生活に戸惑って家庭崩壊が起きそうなところを、屋敷に住み着いていた「座敷わらし」との出会いで変わっていく・・・というお話です。いわば岩手という田舎を舞台にしたホームドラマで、岩手の良さや美しさを感じることができ、涙腺を刺激する場面もありました。

しかし一方では、相変わらず岩手が左遷の場所として使われている中央目線の筋書きに釈然としない思いが残ったのも事実です。
地方の良さを引き出すとか、地方分権とか、地方の活力創出ということが言われているなかで、依然として東京を中心としたものの考え方が変わらないことに違和感を感じるとともに、この意識を大きく変える岩手にすることが、本当の意味での震災からの復興であると思った次第です。

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( ↑ 春の学長室の窓からの眺め: 中村学長撮影)

 

 2012年4月24日

「県大活力の素 !?」

久し振りに学生と語り合う機会がありました。AO入試で入学した学生との座談会でした。本学を志望した動機や入学まで、大学生活でのこと、県大への要望など、話しは尽きず予定を45分もオーバーしてしまいました。

AO入試については、半年以上も前に入学が決まるため、一般選抜で合格した学生達との学力差がしばしば話題に上りますが、その危惧はすぐに消えました。本学では入学前教育をしっかり行っていることもありますが、出身高校でも、英語や数学などを特別に個人レッスンしてくれているところがあることを聞き、驚きました。そのお陰で大学の授業にもついて行けるとのこと、高校の先生方に感謝、感謝です。必ずしも全ての高校がそうはいかないでしょうから、ついていくのに苦労している学生もいるようですので、入学後は本学の先生方の懇切なご指導に大きく期待するところです。

本学のAO入試では、「本学で学ぶことを強く希望」し、「入学後に何をどのように学びたいかの明確な目標と強い意欲」があり、「それを実現するための能力と活動について高く自己評価できるものをもっている」ことを重視していますので、その気持ちを面接などで強く訴えることができた学生が入学しています。

それをあらわすかの様に、座談会では小気味良いほど自分の考えをはっきりと述べてくれました。キャンパス・アテンダントや様々な課外活動にも積極的に参加し、大学生活をエンジョイしている様子が窺え、うなずけました。聞けば、AO入試で入った学生の多くが学内外でリーダー的な役割を果たしているとのこと、正に「本学の活力の素がここにある」という感すら抱きました。

彼らは将来の夢や志す方向もしっかり持って入学したはずですが、1年2年と学ぶ中にいささか迷いを感じ始めている様子も垣間見えました。それが大学で学ぶということだろうと思います。視野の広がりとともに千々に迷い、そしてその中から確かな道を探し出し、さらに前へと進んでいって貰いたい、とつくづく願わずにはいられません。 DSCF2439.JPG 

 2012年4月9日

冬と春のせめぎ合いの中での入学式

春の日差しでようやく地肌を見せた芝生も、激しく舞った今朝の雪で、また白く隠れてしまいました。新年度を迎えても、どこかで春が足踏みをしている感じの滝沢キャンパスです。

4月4日には異常な激しさの春の嵐が通り過ぎ、名残の風が未だ吹き荒れる中を宮古キャンパスで、また5日には、時折横殴りの雪が激しく降り散る中を滝沢キャンパスで、ご来賓や多数の保護者の方々の見守る中、併せて745名の新入生を迎えました。昨年は東日本大震災のために見送られた入学式でしたので、殊さら感慨深いものがありました。式辞を述べる間、これから始まる大学生活への期待を込めた、射るような新入生の視線に、眩しさと責任の重さを感じました。彼らの期待を裏切ることなく、充実した県大での生活を送らせ、一人も欠けずに卒業させたいものです。

入学式に合わせ、東日本大震災大津波で亡くなられた方々のご冥福と、一日も早い被災地の復興を祈念して、宮古キャンパスでは祈念碑の設置と祈念植樹を、滝沢キャンパスでは祈念植樹を行いました。植樹したのは、種類の違う、いずれもカエデでしたが、これらが青々と葉を茂らせる頃には、活気溢れる沿岸部に復興・発展していることでしょう。

今年の滝沢キャンパスの入学式は、一昨年まで行われていた盛岡駅西口の盛岡市民文化ホール(マリオス)から本学に隣接する岩手産業文化センター(アピオ)に会場を移しました。体育館のような大きな会場ですので不安がありましたが、建物としても音響的にも予想外の立派な造りで、厳粛な雰囲気の中で入学式を行うことができました。関係者には会場づくりなどでたいへんご苦労をおかけし感謝申し上げます。初めての場所で不慣れな点があったかもしれませんが、天候以外は、大変良い入学式であったと思います。

  と書いている間に、先ほどまで日差しがあって穏やかだったのに、あっという間に風が強まり、吹雪になって、岩手山どころか目の前の共通講義棟も見えなくなりました。相変わらずの変な天候です。何かと天変地異の激しい昨今です。来年こそ、春めいた穏やかな天候の中で入学式を迎えたいものです。

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 4月4日 宮古短期大学部入学式
(宮古短期大学部 体育館)
 宮古キャンパス 復興祈念植樹式
(宮古短期大学部 学舎前)

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 4月5日 県立大学、大学院、
盛岡短期大学部入学式
(岩手産業文化センター アピオ)
 滝沢キャンパス 復興祈念植樹式
(滝沢キャンパス 第一調整池付近)

 

2012年3月23日

675名の旅立ち

今日の岩鷲山は、待ち遠しい春が近いことを思わせる白みを帯びた青空の中に、ごく薄い白のレースのカーテンの向こうにあるかの様に全身を見せています。卒業式を終え、それぞれの赴任地や進学先に旅立つ若者の前途に幸多かれと祈る様に...。

平成23年度岩手県立大学、岩手県立大学大学院、岩手県立大学盛岡短期大学部の学位記授与式、いわゆる卒業式は、昨日22日に滞りなく行われました。またそれに先立つ先週16日には、岩手県立大学宮古短期大学部の学位記授与式も行われました。両キャンパスで合わせて675名が、新たな道へと旅だっていきました。

昨年は予期せぬ大震災のため卒業式を中止し、滝沢キャンパスでは学部毎に集まって学位記を渡しただけでしたし、宮古キャンパスではそれさえもできませんでした。止むを得なかったとはいえ、昨年度の卒業生には大変気の毒な思いをさせてしまいました。

今回、私にとっては2年ぶりの卒業式で、震災後ということもあって、新鮮な気持ちでかなりの緊張感を持って臨みました。ほぼ半数を占める女子学生が華やかさを醸し出す中で、厳かに、しかも礼儀正しく進行し、私が経験した中でも久々に胸を打つ良い卒業式でした。卒業生代表の挨拶には、震災後のボランティア活動に触れた部分もあって、これまで以上にグッとくるものがありました。

夕方には、各学部の卒業パーティーにお招きを頂きましたが、盛岡短大部を含む5学部を1学部20分程度で回らなければならないので、卒業生たちに十分お話を聞く時間も無かったのが残念でした。卒業生の喜びもさることながら、今年も無事卒業生を送り出せたという安堵感を滲ませた先生方の顔の方がより印象的でした。

先生方、ご苦労様でした。卒業生の皆さん、Bon Voyage !!

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 岩手県立大学、岩手県立大学大学院、
岩手県立大学盛岡短期大学部
(3月22日 マリオス大ホール)
 宮古短期大学部
(3月16日 宮古短大部体育館)

  

2012年3月9日

東日本大震災から1年

あれから、もう一年。あの日、学長奨励賞の受賞学生との楽しい懇談会を終え、夕方から仙台で予定されている会議に出かけようとしていた矢先の、突然の大揺れでした

次々と伝えられる異常事態の連続に、「こんなことが起きるの」とテレビ画面に呆然としながらも、宮古短大部の安否、学生の安否、入試の後期日程や卒業式、入学式等々、緊急に対応しなければならない学内の様々な課題に、各学部や本部の皆さんの協力を得て慌ただしく対応していたことを思い出します。

それから3週間ほど過ぎた4月上旬、私は県大を代表して被災のお見舞いと復旧・復興へのご協力をお伝えするため、県内被災11市町村を訪問しました。道すがら目に入る津波の破壊力のすさまじさ、中でも、三陸鉄道の島越駅付近では高架橋や駅舎が完全に崩れ落ち、陸前高田では街並みが無くなっている状況に、言葉がありませんでした。とてもカメラには写し込めない惨状に、写真撮影も止めました。

宮古には、その後個人的にも幾度か出かけましたが、閉伊川の下流にかかる45号線の橋桁や市役所に近づくと、津波が漁船を乗せて堤防を越え、車や家を流すテレビ映像で見た情景が思い出され、息苦しく動悸が早まるのを感じます。

 

今年の1月末、野田武則釜石市長をお訪ねする機会がありました。その帰りに、2冊の本を頂きました。1冊は「近代製鉄の父」といわれた「大島高任」についてのものでしたが、もう1冊は石井光太氏による「遺体 震災、津波の果てに」でした。

その石井氏の著書は、大津波災害の別な一面を訴える名著でした。とかく私たちは津波の物理的破壊力の凄さにだけ目を奪われ勝ちですが、愛する家族、親しい人が目の前で津波にさらわれ、助けられなかった方々の無念さ、心の傷の深さは、被災者でない私には、到底はかり知れないことでした。

 

ハード的な復興は、知恵を出し、お金を注ぎ込めば、右肩上がりで進むでしょう。しかし、大津波で負わされた心の傷、辛さや遣り切れなさは、復興が進むとともにむしろ深くなる様に思われます。時間が解決するところもあるでしょうが、心の傷が癒されなければ、被災者の本当の復興はないのでは、と改めて強く感じました。

本学の学部構成等の特徴を活かし、県内外を問わず精神的な悩みや心の傷を癒すお手伝いは、県大ができる大きな役割の様に思います。全国の大学を捲き込んでその一役を担ってくれた学生ボランティアセンターのGINGA-NETプロジェクトには、大いに敬意を表するとともに、今後とも支援を続けたいと思っています。

2012年2月24日

学生諸君の活躍に感動!!

先日、2月10日に、「平成23年度学長奨励賞授賞式」を行いました。

研究、課外活動、社会活動等の面で顕著な活躍をした学生の皆さんが対象で、全部で26組が受賞しました。

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情報処理学会全国大会やJST支援プログラム採択などでのソフトウェア情報学部及び研究科の皆さんの学術分野での受賞のほか、東日本大震災発生直後の学生や地域の方の安否確認、そしてその後の被災地・被災者への支援活動など震災関連の取組みによる社会貢献分野での受賞が多かったのが特徴です。テレビ、ラジオ、新聞などで多数取り上げていただいた「いわてGINGA-NETプロジェクト」や「復興girls*」も受賞しています。

授賞式終了後、受賞者の皆さんと懇談する会を持ちましたが、昨年度にくらべて人数が増えただけでなく、学生のみなさんの学業や研究、そしてそれ以外の幅広い分野にわたる活躍が一層盛んになってきていることを感じ、本当に嬉しく、誇らしく、そして頼もしくも思いました。

これは、本学が「中期目標」の中で掲げている「学生を主人公とした学生の志を高める教育」、そして私が学長就任以来抱いてきた「活力あふれる大学にしたい」という想いと合致する学生たちの活躍であり、感動すら覚えました。

これからも「学生目線」に立って、学生たちの様々な活動を大いに支援していきたいと思っています。

 

 

2012年2月14日

新企画スタート。そして志願倍率を見て想うこと・・・  

岩手県立大学内の学長室の窓からは雄大な岩手山を一望することができます。

この岩手山には、春先の雪解けの形が「鷲」のように見えることから「岩鷲山」という別名がついています。

学長室の窓から「岩鷲山」を望みながら、学内外のことについて想いをめぐらせ、それをこの場でお伝えしていきます。

(事務局注:ページタイトル部分の背景写真の岩手山は、実際の学長室からの眺めを学長自ら撮影したものを使用しています)

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さて、滝沢キャンパスも、岩鷲山も白く雪化粧しているこの時期は、まさに受験シーズン真っ最中というところでしょう。

本学でも一般選抜の「平成24年度入学者選抜志願者数」を発表したところですが、前期・後期日程を合わせた4つの学部の合計の志願倍率が昨年の6.2倍を上回る7.8倍という状況となりました。

昨年3月の東日本大震災を経験し、厳しい環境におかれている被災地にある大学として、昨年を上回るという結果となったことは、大変意義深いことだと考えています。

この時期に本学を選んでいただいたということの意味や気持ちに応えることができるような教育を提供できるよう、一層気を引き締めていきたいという想いで一杯です。